FINAL JUDGMENT
〜出会った二人〜












[※ここからは、WB六巻(中)を読み終えてから読む事をお勧めいたします]

















2199年のある日、ついに『賢人会議』が動き出した。

嘗てアフリカと呼ばれていた大地が、第三次世界大戦によって変貌した無数の小島。その小島の一つに賢人会議の隠れ家は存在していた。

ひたすらにチャンスを待っていた『賢人会議』だが、シティ・ニューデリーからの依頼が来たことにより、チャンスが来た事を悟る。そして『魔法士の人権と独立を』という大義名分を掲げて、己が信ずる信念の為に行動を開始したのであった。












先のシティ・メルボルンで起こした戦いから数ヶ月が経過していた。

これからの『賢人会議』はシティ・ニューデリーにて動き、その名をテロリストではなく、一介の組織としてのれっきとした主張を持つ一団として歩みださねばならないと、真昼はサクラに告げた。

だが、数ヶ月前の『賢人会議』の発言中に、突如横から乱入してきた黒髪の少女の発言のお陰で人々はますます混乱し、同時に『賢人会議』への強い疑念を抱いてしまったらしい。

特に、軍の影響力が非常に強いシティ・マサチューセッツでは、『賢人会議』が完全なる悪であり、シティに住む人間達を虐殺し、魔法士だけの世界を作ろうとする、さながらナチスのような連中だと人々に説明していた。これはシティに対する人間達の反乱、及び『賢人会議』への裏切りを防ぐ為の策である。加えて、その考えは『一応は』間違ってはいないのだから、余計にたちが悪い。

さらに厄介なのは、『賢人会議』への反感をもっている者は、なにもシティ・マサチューセッツに限らず、世界に残った六つのシティ全てに当たり前のように存在していることであった。その中には当然ながら、シティ・ニューデリーも含まれている。

これらの事態によりシティ・ニューデリーへの潜入が困難になったことが、賢人会議の参謀である真昼の頭を悩ませていた。

然しながら、この状況を大人しく受け止めているほど『賢人会議』は諦めがよくない…というか寧ろ悪い。そうでなければ『賢人会議』などやっていられないし、あのシティ・メルボルンでの戦いを生き抜けてなどいない。

結果として、真昼はあの手この手、手八丁口八丁、裏工作その他諸々全てを駆使し、シティ・ニューデリーのルジュナ・ジュレを始めとするマザーコア反対派を懐柔し、アニル・ジュレが主催を勤めるシティ・ニューデリーで開かれた会議の場に乱入し、会議をうやむやにして逃走した。

それら、突如のハプニングの発生により、会議の開催は明日の午後からとなった。

つまり明日は、シティ・ニューデリーの会議の最終日である。その為に、真昼はルジュナによって与えられた専用の部屋で作戦を考えていた。

口元に浮かぶのは薄い笑み。窓越しに見える漆黒の空を背景にして手を組んで思考を重ねる。

しんと静まり返り、物音一つしない空間の中で、ただただ試行錯誤を重ねる中、突如、コンコン、とドアを叩く音がした。

「ん?入っていいよ」

いつもどおりの温和な声で告げた。

変に態度を崩す必要が無かったのは、ドアの叩き方でドアの向こうの相手が誰なのかは十分に特定可能であって、それがいつも聞きなれた叩き方だったからだ。

「…失礼する」

そして真昼の期待通り、部屋に入ってきたのは黒髪ツインテールの少女、サクラ。この『賢人会議』の長を務める少女。

「それで、用件は何?こんな時間まで頑張ってる僕に対してコーヒーの差し入れでも持ってきたのかな?」

その言葉だけで、サクラの額に青筋が走ったのを、真昼は確かに確認した。小さな笑みがこぼれてしまいそうになるけれど、それを顔に出してしまうと本気でこの身が危ない事になってしまうので、悟られないようにしてなんとか押し殺した。

サクラをからかうのは本当に面白い。こっちの冗談に本気になって付き合ってくれるからだ。錬では出来ない事なので、それがますます面白さに拍車をかけてくれる。勿論、当のサクラとしてはそれどころではないのだろうけれど。









就寝前に真昼に現状の確認、それとついでに挨拶でもしておこうかと思って真昼の部屋を訪れたのだが、どうやらその選択は正しいとは言えなかったようだ

当初は、こんな夜遅くまで頑張っている真昼に対し、労いの言葉でもかけてあげようかと思ったのだが、最初の一言で全てがぶち壊された。全くもっていつも思うのだが、人の気分を害する事に関しては非常に天才的な男である。

しかしながら、こんな時間に真昼と馬鹿なやり取りをするつもりも毛頭無いので、サクラはさっさと聞きたい事だけ聞いて帰る事にした。

「ところで真昼、明日の作戦はどうなんだ?貴方のことだから、二重も三重も裏の策ぐらい、考えてあるのだろう?」

「そうだね…」

真面目な顔でその質問を継げたサクラに対し、ふむ、と真昼は考え込む仕草を取る。

だが、その顔に浮かぶ表情は、考え込む時のそれではない。サクラが此れまで何度も見てきた『悪巧みを思いついた』時の真昼の顔だ。

ぞくり、と、背筋に寒気が走る。

真昼の『そういう顔』の恐ろしさを何よりも知るのは、真昼の傍に居続けたサクラだ。

この男は、何をするにも絶対に幾つもの策を考える。常に最悪の事態を想定し、それだけは回避できるようにと。そして、時には妙手とも言える方法を用いて、不利な事態を一気に有利状態に持ち直すなどという事もこなしてくれる。

天樹の血が生み出した本物の天才、天樹真昼。味方に居るととても頼りになる反面、敵に回れば非常に厄介な相手となる存在。今のシティが正にそんな感じなのだろう。

そして、サクラが言うのもなんだが、天樹真昼という男のその笑顔の裏に隠した暗黒は、底の見えない漆黒の闇がうねり、一筋の光も差し込まない為に、未だにその片鱗すら見ることが出来ないそうな、そんなイメージがある。

この男の歩いた後には漆黒の闇しか残らない。サクラの黒を基調とした外見がとても小さなものに見えてしまうくらいに、この男の心は闇に包まれている。そんなイメージだ。

しかし、この男が居たからこそ『賢人会議』はここまで来れたのも事実である。やはり、頭の回る参謀がいなかれば、組織というものはうまく動かないものなのだろう。

『賢人会議』はまだスタート地点に立ったに過ぎない。これから規模を拡大し、魔法士の人権と独立を得て、マザーコアという非人道的なシステムを変えていく。

無論、今現在シティに住んでいる人達の事を考えると、『賢人会議』のやる事がどういう事なのかは否応無しに理解せざるを得ない。さらに多くの人に被害が出てしまうだろうし、人間達は『賢人会議』を憎むだろう。そして、自分達を殺しにくるだろう。

しかし、サクラは決めたのだ。『賢人会議』として、シティを生かすためだけに生み出されて、マザーコアにされる子供達を救うのだと。だから、ここまで来たのだと。

そこまで思い返した時に、真昼がふぅ、と小さく息を吐いた。

「…何か、思いついたのか?」

欠片ほどの期待を抱いてすかさず問いかける。すると真昼は此方を向いて、笑顔のままゆっくりと答えた。

「ううん、なんにも」

「……貴方に聞いた私が馬鹿だった。そしてついでに時間の無駄だった。美容に悪いので私は寝かせてもらう」

予め脳内で考えておいた、適当な去り際用の台詞を2.3個ほどはき捨てた後にサクラは踵を返し、己の部屋へと足を進めた。










「…はー、やれやれ、いい加減に冗談の一つや二つくらいは理解して欲しいんだけどねぇ…」

サクラの気配が完全に消えたのを確認した後に、額を押さえた真昼は、困った顔で苦笑いして溜息をついた。

「さて、と……冗談はここまでだ、後もうちょっとで作戦が完成するから、頑張らないと」

眼鏡の奥の瞳がすっ、と鋭いものになる。

真昼は再び端末に向き合い、キーボードに指を走らせた。

魔法士達の未来を担う子供達の為に、完璧な『作戦』を考えなくてはならないのだから。











【 + + + + + + + + + 】













「―――なるほど、了解いたしました」

シティ・ニューデリーのマザーコア賛成派が属する建物の中で、銀髪の青年は、通信素子を通して会話をしていた。そして今、重要な情報を全て聞き終えて、通信を終える。

シティ・ニューデリーの執政官用のビルの内面の盗聴防御はほぼ完璧に近い精度を誇っているが、それでも、できる限りこういった通信素子の使用は控える事にしている。

通信の相手はシティ・ニューデリーの執政官、アニル・ジュレ。シティ・ニューデリーのマザーコア賛成派であり、ハーディンが尊敬しながらも、その心の奥底に常に注意を払っている人物でもある。

無論、アニルの事が信じられないというわけでは無い。確かにアニルは信頼できる人物であるし、ハーディンとしてもその考えにはとても共感が持てる。アニルが突然にしてマザーコア反対派を裏切ったその理由はまだ分からないが、ハーディンの中には、一つの、それも確信に近い『予想』が出来ていた。

おそらくだが―――アニル・ジュレの命は、そう長くないのだろう、という一文の付け足しもこめて。

だが一方で、ハーディンにはどうにも、彼の本性が気になって仕方が無かった。それは、おりしもシティ・メルボルンに出現し『賢人会議』に協力した男―――天樹真昼の陰が、アニルにちらつくからである。

無論此れは、ハーディンの個人的な主観でしかない。そもそも両者は人間としてのタイプが完全に正反対だ。

片や、シティを滅ぼさんとする世界の敵。片や、シティを生かそうとする賢者―――ハーディンは、この二人に対してそういう認識を持っている。

だが、それでも二人は似ているのだ。特に、表面上は穏やかな笑みを浮かべながら、腹の奥底では理解しがたい何かを考えているところが。

そこさえ理解できれば、ハーディンはその時こそ、アニルという人物を完全に信じる事が出来るのかもしれない。

「…まぁ、一番の理由は、僕が『表面上は笑顔の腹黒タイプ』というのを嫌っているだけかもしれませんけどね」

僅かながらの自嘲を交えた言葉を、小さな溜息と同時に吐き出す。所謂『曲がった考え』が大嫌いな事は、ハーディン自身が一番良く分かっている。

「ですが、全ては明日が勝負です。明日こそ必ず『賢人会議』の悪巧みを防がなくてはなりません。そう、なんとしてでも…」

銀髪の青年―――ハーディン・フォウルレイヤーは、その青と緑の目に凛とした輝きを宿らせて、強い口調でそう告げた。









そもそも、ハーディンは本来ならシティ・モスクワに居るはずの人間である。それがどうしてシティ・ニューデリーに居るのかというと…答えは簡単だ。『其処に『賢人会議』が居るから』である。

『シティ・ニューデリーに『賢人会議』が潜り込んだ』―――五日ほど前に、その情報が匿名でハーディンの元に届けられたのだ。

勿論、『賢人会議』の罠かもしれないと最初は疑ったが、中を開いてみればその心配は杞憂だった。何故なら、そのメールの届け主は他ならぬアニル・ジュレだったからだ。

おそらくだが、アニルは『シティを守りたい』という強い一念を持つハーディンを信じてくれたのだと思う。だからこそこのようなメールを送ってきたし、助けも求めてきたのだろう。

ただ、『賢人会議』側の出方を待つために、ハーディン達は大人しくなりを潜めていた…というより、とある理由からシティ・ニューデリーにすら居なかったのである。

仮にもハーディンはシティ・モスクワ側の人間である。それだけで、シティ・ニューデリーの街を気軽に歩く事など出来る訳が無い。その辺りはシティ・マサチューセッツから来ているクレアや、シティ・モスクワから来ているイルも同様である。そして今日は『賢人会議』にその急所を突かれ、イルが『賢人会議』の歯止め役としての本来の役割を果たせなかった訳である。

街の中でよっぽど嫌な事があったのか、帰ってきたイルは『最悪や!今日はほんまに最悪な日や!』と、周囲にわめき散らしていた。

その一方で、何故かクレアの姿が見えない。情報によると、どうやら安全の為に人目につかないところでヘイズと無事に非難しているらしいとの事である。それと同時に、クレアが金髪の少女と偶然にも出会ったという情報が入っていたが、それはおそらくフィアの事だろうとハーディンはそう判断した。

「…にしても、波乱万丈な一日だったみたいですね。しかしながら『賢人会議』が自ら攻め入ってくるとは恐れ入りますよ。あの文献の出番は無さそうですね」

因みに『文献』とは、『賢人会議』が奪った者達を全て取り返したこと、そして次は『賢人会議』の居場所が分かり次第襲撃しに行く事。ついでに『賢人会議』に対する文句もありったけ追記した、とある文章の事だ。

アニルから得た情報により、今日の会議の失敗の理由も、『賢人会議』の行動も、シティ側の人間達がどう動いたのかも分かっている。ハーディンはそれらのデータを元に、一つの作戦を練っていた。

「―――ん?」

刹那、ドアをノックする音。

「どうぞ」

ハーディンの答えに応じて、きぃ、と小さく音を立てて強化カーボン製の白い扉が開かれた。その後に姿を表したのは、普段は被っているはずの帽子を脱いだ、少々目つきの鋭い青年だった。

フェイト・ツァラトゥストラ―――第三次世界大戦に参戦し、現在まで生き残った魔法士で、その正体を、ハーディンの出生の地と同じ『アルカナ・リヴァイヴァー』であったと主張する男。その所持するアルカナは『運命の輪』であり、番号としては10番。ハーディンの『正義』のアルカナは11番目なので、順序的には一つ前のアルカナである。
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「おう、呼ばれてきたぜ…んで、用件ってなんなんだ?ハーディン」

フェイトの言葉を聞いて、ハーディンは改めてフェイトの方へと向きなおる。そう、ハーディンは先ほどフェイトに対して招集の命令をかけていたのだ。フェイトの能力が、ハーディンのたてた『とある作戦』に向いていると信じて。

「ええ、そうですね…夜も遅いし、単刀直入にお知らせしましょう」

一呼吸置いた後に、告げる。

「今回の作戦の中に、フェイトにしか出来ない『作戦』があるんです。だからフェイトには、その作戦に参加して欲しいのですよ。それも単独行動で、です。詳しい内容については、明日になったらお教えしようと思うのですが、それでよろしいでしょうか」

それを聞いたフェイトは、顎に手を当てて少しの間『んー』と唸った後に、眉を潜めて聞き返した。

「…なぁ、その『作戦』とやらを、今、この場で教えてもらうわけにはいかねぇのか?」

「…僕としても教えたいのはやまやまなのですが、万が一、この会話が傍聴されているとも限りません。ですから、これ以上の事は教えられないのですよ。出来れば、そこの辺りを理解してもらえると助かります」

「…へぇ、なーるほど。ま、その可能性は否定できねぇっちゃぁできねぇよなぁ」

フェイトはめんどくさそうな顔で頭の後ろに手をやり、ふー、と軽く息を吐く。

「ええ、話が早くて助かります。
 それでは、また明日、お願いいたしますね」

「あー、わーったわーった」

さらにめんどくさそうに手をひらひらと振った後に、フェイトは肩を竦めながら出口へと向かっていく。

ハーディンはその背中を見送った後に、顔を俯かせて、そして心の中だけでぽつりと呟いた。







(―――申し訳ありません。フェイト。しかし、こればかりは、事前にばれてはならないのです。
 こうしなければ、『賢人会議』の最大の脅威を止める為の術が、なくなってしまいますから――――――)











【 + + + + + + + + + 】













そして―――シティ・ニューデリー、会議の最終日が幕を開けた。













シティ・ニューデリーの一室で、天樹由里はいつもの格好で、客人用の椅子に背筋を伸ばして座り、両手を膝の上において、モニターに移る会議の様子を眺めていた。

由里は昨日の夜にシティ・マサチューセッツからシティ・ニューデリーへと、ハーディンの計らいで移動してきた。聞くところによると、今のシティ・ニューデリーにはヴァーミリオン・CD・ヘイズ、天樹錬、天樹月夜、フィアという名前の先客がいるとの事だった。


天樹錬、というその名前に、由里は一瞬だけだが『まさか、ここにお兄ちゃんが!?』と思ったが、違う人物だった。もし相手が論であれば、由里の持つ『とある能力』に、なんらかの反応を示してくれるはずだからだ。

しかしながら、やっぱりお兄ちゃんに似ているですっ、と、心の片隅で思ったのも事実であった。

また、天樹月夜に関しては『とても元気で活発な女性』という印象を持っている。あまり話せなかったのが残念だけど、この会議が終わって機会があったら話してみたいなぁ、と強く思った。

また、その中でヘイズという人物に会ってはいない。何故なら、ヘイズは昨日、どこかへと姿を消したらしいからだ。今日の会議には間に合わせるとは言っていたから、先ず戻ってくるとの事らしい。因みに、何故かクレアも一緒だとか。

だから、現状で由里にとってこのシティ・ニューデリー内で知っている人物というのは、シティ・マサチューセッツで出会った六人と、このシティ・ニューデリーで出会った人物達だけとなる。その内、イルとクレアは先発隊としてシティ・ニューデリーに早い段階で向かっている。その後、後続隊としてハーディンらが向かうという手はずになっていたのだ。

何故こういう手段をとったかというと、別のシティの魔法士達が一気にシティ・ニューデリーに向かうと、シティ・ニューデリーに対しなんらかの形で不快感を与えてしまうかもしれない、というハーディンの考えからであった。

さて、会議が始まる前だというのに、どうして由里がここにいるのかというと、ハーディンから『由里さんは安全の為にここに居てください。先日に申し上げたとおり、由里さんを『賢人会議』と戦わせるわけにはいきません。少人数とはいえ『賢人会議』は精鋭揃いですし、どんな手段を用いてくるか分からない以上、迂闊な行動は危険なのですから』と言われたからである。

ハーディンの言う事は、確かに筋が通ってはいる。それに『賢人会議』に対抗してのあの放送をやってしまった今、由里が会議場に出るのはよろしくないだろう。もしかしたら、なんらかの形で『賢人会議』が暴挙に出ないとも限らないのだ。

尚、そうなると、それならどうして由里がシティ・ニューデリーに居る事が出来るのか、という疑問が浮かぶが、その件に関しては次の理由がある。

もしも『賢人会議』がまたしてもあの演説のような事をしようとしたならば、再び由里が介入し、人々の心が『賢人会議』側に移動するのを防ぐストッパーとしての役割を果たす。それが、ハーディンの考えた作戦の一つだった。彼曰く『状況次第でアドリブを加えなければならない可能性も十分に在りますから、油断しないで下さいね』との事。

それらの事から、ハーディンが自分の事を心配してくれているのは、物凄くわかる。

全ては僕らに任せていればそれでいいと、優しい笑顔でそう言ってくれた。

そして、会議開始から十分が経過している。

中央に執政官たちが集まり、その周りにある椅子に大勢の人が座っている。

その光景を見ながらも、由里の心の中では、一つの考えがあった。









(…ハーディンさんの配慮は嬉しいです…でも…)

――それは、心のどこかでは納得しきれていないという思いの表れ。

そう、由里がやりたいのは『賢人会議』の長、サクラに、自分の気持ちを直接ぶつけたい、という事だ。

先日の、マザーコアとなる子供達を奪回する時には、由里は己の正体を隠していたからそれはままならなかった。しかし、正体を隠す必要性が殆ど無いこの状況なら、サクラが由里の顔を見た瞬間に、先ず間違いなくあの演説の時の少女だと認識してくれるだろう。そうすれば、由里としても話がしやすくなるはずだ。

せめて、伝えたいと思っていた。『賢人会議』の愚行の裏で一体どんな被害が起きていたのかを。そして、どれだけの人達が幸せを奪われたのかを、最後に、由里もまたその被害者なのだという事を―――。

(でも、実際にサクラと出会ったりしたら、そんな余裕は無いかもしれないよね。寧ろ、直ぐに戦いになっちゃうかもしれない…。そもそも、現実的に会える訳なんてないのですっ。だから、あんまり考えないほうがいいかもしれないの)

ふぅ、と小さく息を漏らした由里は、ふと、窓の方へと振り向いた。































―――刹那、一人の少女と目が合った。
























由里の黒くて大きな目がまんまるく見開かれ、同時に、心臓が跳ね上がりそうになった感覚を覚える。

窓際から侵入を試みようとしていた、一人の少女。

それは、自分と良く似た、黒髪ツインテールの少女。

刹那、全ての音が無音へと変わったかのように、或いは時の流れが止まったかのように、ただそこには沈黙だけが存在を続けた。











【 + + + + + + + + + 】













黒髪ツインテールの少女―――サクラもまた、予測だにしなかった目の前の光景に呆然としていた。

ことの始まりは、今朝方、真昼から突然作戦が告げられた。

それは、真昼が指定した特定の部屋に潜入してきて欲しい、というものだった。

サクラとしてはその意図が測りきれず、その言葉を聞き終えた数秒間は頭が疑問符で埋め尽くされていた。

しかしながら真昼のいう事に対して反論しようにもする為の理由が無かったので、結果、その通りに行動を起こす事とした。

そういえば、サクラが部屋から出ようとした時に、真昼は最後に一つ、サクラに言付けていた事があったのを思い出した。

『もしかしたらそこに、誰かいるかも知れない。だけど、絶対にその子を殺しちゃ駄目だよ』

確か、そんな言葉だった。











そして今、サクラの目の前には、一人の少女がいた。

真昼がどうやってこの事を見抜いたかは分からない。だが、あの天才の事、おそらくサクラの想像もつかないことをちゃちゃっとやってのけたのだろう。

後は、どうにかして目の前の少女と接触するのみ。

何故なら、サクラには、目の前の少女に、確かな見覚えがあった。

そう、あの演説の時に邪魔をしてくれた少女と、見間違う事無く同一人物であるという確信が生まれるのを、確かに感じた。











【 + + + + + + + + + 】













「し、侵入者ですっ!覗きですっ!ストーカーですっ!」

目の前に少女の姿を確認した由里は慌てふためきながらドアまで走り出し、壁にかけてある受話器の形をしたインターフォンを手に取る。それにしても、侵入者が聞いたら間違いなく怒りそうな発言である。

「え、えーと!
 イルさんでもクレアさんでもいいからで…あ、あれ?」

耳に当てたインターフォンは『つー』という規則的な機械音すらならさない。これが意味する事はただ一つ、何らかの形でインターフォンによる連絡が取れなくなったという事である。それも、由里のあずかり知らぬところで。

「じゃ、じゃあ、部屋の外に…え、ええっ!?」

両手でドアノブを掴んで左右に回すも、鍵がかかっているかのように開かない。そもそも、普通に考えればこっちが内側なんだから、鍵を開ける為の主導権はこっちにあるはずなのである。

にも関わらず、扉は開かない。

(あっ)

そういえば、はたと思い出す。この扉はIDカードを通さないと開かないのであった。

慌てていてそんな事すら忘れていた自分にちょこっとだけ苛立ちながら、由里はスカートのポケットからIDカードを取り出して、ドアの開閉を管理していてるセンサーに当ててみる。

「ど、どうしてぇっ!」

センサーが何の反応も示さない事に動転し、思わず涙目になる。内部で電源が切られているか、それとも外部から何者かがこの部屋に対して遠隔操作を行ったのか…何れにせよ、真実は定かでは無い

(う、後ろは、窓は大丈夫…ですよね?)

限りなく高まった不安感をなんとか抑えて、由里は背後を振り返る。その時、冷や汗が一滴由里の頬を伝った。

そして振り向ききったと同時に、ガッシャーン、と、窓ガラスが割れる音がした。

「い、いやぁ!」

反射的に由里は叫んでしまった。侵入者に入り込まれたという事実が、今、目の前にあったからだ。

自分と良く似た、黒髪ツインテールの少女が、今、由里の部屋に入ってきている。だが、少女の方は特にこれといった行動も起こさず、ただただ由里を真っ直ぐに見つめるだけだった。

(―――あ、でも、これってよく考えれば…)

その内に頭が落ち着きを取り戻してきたのか、冷静な考えができるようになってきていた。

ここに来て由里は、逆にこれはチャンスなんじゃないかと思った。そう、目の前にいる黒髪ツインテールの少女に対し、自分の考えを伝える為のチャンスなのではないのか、と。

(しっかり!しっかりして!私!)

震える心を励まして、なんとか落ち着かせる。その後、恐る恐る口を開く。

「―――まさかと思うけど、あなたの名前はなんていうの?」

答えなんて心の中で99パーセント分かりきっていたけれど、それでも、聞かずにはいられなかった。

「…人に名を名乗る時は、自分から名乗れと習わなかったのか?」

しょっぱなからとびかう、皮肉を交えた少女の声。それは、実際に顔を合わせるのは始めてである由里にとっても、彼女の性分を嫌というほど理解させてくれる、いい意味でも悪い意味でも特徴的なものだった。

そして当然ながら、その答えに由里がいい気分になれるはずが無い。もしかしたら目の前の少女はそれを分かっていてやっているのかもしれないと思うと、お腹のそこからむかむかという感情が沸きあがってくる。

だが、ここで感情に支配されていても何にもならないので、ぐっとこらえる。同時に、相手の少女に由里の心情を悟られないようにする為に、表情はあくまでも普通の表情を保つ。

「…いいでしょう。それなら、私の名前を言ってあげます」

ここで一旦台詞を止めて、すぅ、と息を吸った後に、由里は己の名前を告げた。








「―――私は、由里。天樹由里ですっ」








天樹、という苗字が出たときに、サクラが眉を潜めるのが確かに確認できた。

だが、眉を潜めたのは本当に一瞬であって、次の瞬間にはつい先ほどまでと同じ、鋭い目つきをした少女の通常の表情に戻る。

「なるほど、なら、私からも名前を返させてもらおう」

サクラもまた一呼吸置いて、己の名前を告げた。










「『賢人会議』―――サクラとは私の事だ」











―――由里の心の中に、様々な感情と、その感情が生まれた時の情景が瞬時にして浮かんだ。

育ての親を殺された悲しさ、背景はシティ・ニューデリーの、崩壊した街並み。

犯人を知った時のあの怒り、背景はシティ・ニューデリーの小さな墓地。

赤の他人とはいえ、子供達を失った辛さ。背景はシティ・メルボルンの小さな孤児院。

ルーエルテスの孤児院で、無邪気に遊ぶ子供達を見た時の嬉しさ。そしてそれは、かつてシティ・メルボルンで守ることの出来なかった、由里にとっての守りたい対象。

それら全ては、『賢人会議』に直結するもの。

何か熱いものがこみ上げる感覚が、胸の中を支配する。

やっと会えた。ついに会えた。

由里の育ての親の仇。シティ・メルボルンの子供達の仇。そして―――――――――忌むべき世界の敵。

「あなたが…あなたがサクラ!こうして出会うのは初めてですっ!」

「その顔、その声…成程な、これで確信が持てた。あのような放送を行ったのは間違いなく貴女だな。
 …そして先日、シャロンを仕向けたのもあなた方の仕業だったのか……なら都合がいい。答えろ、あの子達は今何処に居る?」

どうやらサクラの方も、由里を覚えてくれていたようだ。

ぎん!という音がしそうなまでに鋭い目つき。その瞳には怒りと憎しみがありありと浮かんでおり、正に羅刹と形容するに相応しい。

一瞬だけ気圧されそうになったが、それでも由里は気を強く持ち、言論による反撃に躍り出る。

「あのような放送、というと…ああ、あの放送ですか。
 その通りです。ハーディンさんやルーエルテスさんに協力してもらって、あなた達の回線に割り込みました。
 あなた達に真昼という人がいるように、私達にも優れた参謀さんが居たんですっ。
 この世界を、あなた達の思い通りになんてさせないんだから!」

ここで一呼吸おいて、由里は続ける。

「『返す』ってなんですか?
 あの子達は元々シティの動力源となって生きる為に生み出されたのですっ!だから、本来あるべき場所に返しただけですっ!」

「…本来あるべき場所、だと…。
 ふざけるな。非人道なやり方で生を望む者を無理矢理死へと突き落とすのが、あなた達の正義なのか?」

…刹那、由里の頭の中で、なにかがぷちん、と音をたてた。

「…散々虐殺を繰り返したあなたが、非人道なんて言葉を口に出来る立場だと思ってるの!?
 確かに私だって、マザーコアにされる魔法士は可哀相だと思います。
 …でも、私の知っている孤児院の子供達が生きるのに必要なんです。だから、マザーコアが必要なんですっ」

「孤児院…か。しかし
 つまりは、ならば魔法士が死んでも構わないというのか、貴女は。
 所詮は貴女もあいつらと、シティの連中と同じか」

「あなたにそんな事を言う資格なんてあると思ってるの!?
 魔法士だけが助かれば人間なんて皆死んでもいいなんていう、ま、曲がりきった考えの持ち主にそんな事言われたくなんてないですっ」

負けじと反論する為に、禄に台詞も文章構成も考えないで、とにかく発言を繰り出した。ただ、そんな中でも、流石に「曲がりきった」などという言葉を使うのには抵抗があったので、そこの部分だけつっかかってしまった。

「…ほう、貴女は、私をいかれた考えの持ち主だというのか」

普通の人間なら逆切れを起こすであろう言葉を聞いても、サクラの口調は冷静なままだ。おそらく、長年言われ続けたであろう単語であったがゆえに、耐性というべきものが出来ていたのかもしれない。

「そ、それ以外になんて形容すればいいんですかっ!」

「…まぁ、そんな事はさして重要ではない。
 大事な事は、マザーコアにされる魔法士の苦しみが貴女には分からないのか―――そういう事だ。
 なまじ私と容姿が似ているだけに、余計に腹ただしいのでな」

腹ただしいのはこっちだって同じですっ、と言いたくなる衝動を抑えて、由里はさらに反論する。傍から見れば、少女二人が口喧嘩しあっているような光景に見えてるかもしれない、と思ったけど、敢えて気にしないことにする。

「そんなにマザーコアマザーコアってしつこく連呼するくらいなら、マザーコアに変わるエネルギーの一つでも持ってきてから言って下さい!
 それを碌な対策も立てないでたくさんの人達の命を奪って、あなたは神にでもなってるつもりなの!?
 やるべき事をやらないで暴力に訴えるなんて、最低なんですっ!」

「―――世界再生計画が頓挫した時点でそんなのは不可能だ!青空を取り戻すことが不可能と分かった以上、こうする以外に術はないだろう!
 ならば貴女に策があるとでもいうのか!」

「そんなものがあったら、私だってこんなところにいません!
 だけど一つだけ分かってる事があった!それは、今のこの世界は、あなたみたいな、親の注意も聞かないでわめきとおすような子供の我侭なんかが通る世界なんかじゃないって事ですっ!
 …いいもん、最初から分かってた。あなたと私は相容れる事なんて出来っこないって!だから私も、あなたと同じ手段を取らせていただくんですっ!」

ゲイヴォルグを握る手に力がこもる。そして次の瞬間、由里は脳内に記憶されていた『槍を持った際の基本的な構え』をとっていた。










「―――そして、あなたを倒すんですっ!!」










それを聞いて、サクラの顔に不敵な笑みが浮かんだ。

「…つまり、嘗ての私と同じく、武力行使に出るという事か。
 ふ、ならば手っ取り早くそう言ってくれればよかったものを。
 そうだ、武器の違いこそあれど、最早、私達は戦う事で語る種族だ―――行くぞ、天樹由里」

サクラもまたナイフを構え、臨戦態勢に入る。不敵な笑みが掻き消えて、真面目な顔に切り替わった。

そして戦いの開始を告げるための一言は、由里の口から告げられた。

「いいもん!あなたみたいなぺったんこに負けないですからっ!
 きっと性格がひねくれていて我侭だから、そういうところも成長しないんですっ!」

「―――ほう、言ったな。言ってくれたな…」

サクラの額に青筋がくっきりと浮かんでいるのが、肉眼で確認できた。どうやら、よっぽど気にしていたらしい。

恐怖心からかちょっぴり背筋が震えたけれど、ふるふると首をふってそれをなんとかかき消す。

一瞬だけ目を瞑り、己の中だけでだが、戦いの口上を告げる。

(…ハーディンさん、ごめんなさい。私、やっぱり戦います!
 だから…お爺ちゃん、お婆ちゃん、そして孤児院の子供達…見ていて!)

瞳を開け、旨の内に秘めた想いに答える為に、由里はゲイヴォルグを構えて駆け出した。

同時に、サクラが真っ向から由里へと向かってくるのが確かに見えた。






























<To Be Contied………>















―【 おまけどころじゃない存在感になっちゃってるらしいキャラトーク 】―










ノーテュエル
「…せ、戦闘開始!?」

ゼイネスト
「やっと戦闘シーンか…ここまで来るのにどれだけかかってんだ?」

ノーテュエル
「んじゃ、今回はお茶でも飲みながら語りま…わっ!」

ゼイネスト
「おい、なんで何もないところですっころぶんだおま…」












(ぽちっ)











ノーテュエル
「あ」

ゼイネスト
「あ、じゃないだろ!
 何どさくさにまぎれて『ゲスト召還ボタン』押してやがるんだお前は〜っ!」














アルティミス
「…あ…こ、こんにちは………」












ノーテュエル
作品違うじゃないの―――っ!!
 つまり此れはアレ?召還ボタンは『少女達は明日へと歩む』にも対応していたって訳?新発見だわ!」

アルティミス
「はぅ…ご、ごめんな…さい…」

ゼイネスト
「おいノーテュエル、お前が大声出すからびっくりしてるぞ…ていうか今にも泣きそうな一歩手前なんだが」

ノーテュエル
「うそっ!うわーごめんね〜。ほらほら、顔上げて、元気出して!折角可愛い顔してるんだから!」

アルティミス
「…可愛い?アルティミスが、可愛い?」

ノーテュエル
「そう!お世辞でも何でもなくね!可愛いって私は思うのよ!ゼイネストもそうでしょう!」

ゼイネスト
(そこで同意を求めるのか…まぁ、ここはうまく答えておくか)
「ああ、まぁ、概ね同意だ」

アルティミス
「…………(顔を赤くして俯いている)」

ノーテュエル
「…あらら、今度はこうなっちゃった。

ゼイネスト
「…君は、アルティミス、だったな」

アルティミス
「…ふぇ?ど、どうしてアルティミスの名前を知ってるんですか?」

ノーテュエル
「いや、自分で言ったじゃないの。アルティミスって」

アルティミス
「あ…そうでした…」

ノーテュエル
「そうそう、だからこっちにいらっしゃいよ」

アルティミス
「…ひぅっ!」
(不安と恐怖に怯えながら後ずさりする)

ノーテュエル
「…ねぇゼイネスト、私、何か拙い事言った?」

ゼイネスト
「いや、別にそういう言葉は無かったと思ったが…」

アルティミス
「ご、ごめんなさい!
 え、ええと、なんて言いますか、その…」

ゼイネスト
(緊張している)

アルティミス
「あ、アルティミスのこと…いじめない…ですか?」

ゼイネスト
「な、なに!?ど、どういう意味だその発言はっ!?」(一瞬ずっこけて、取り乱す)

ノーテュエル
「ちょっと!なんでそうなるの!いじめない、いじめないってば!
 だから安心してこっちに来てってばー」

アルティミス
「…う、うん…」

ゼイネスト
(こりゃ本当に今までに無いパターンだな…ファンメイが骨が折れる思いをしたのも無理は無い、か)










アルティミス
「ご、ごめんなさい…アルティミス、今まで色々あったから…」

ノーテュエル
「まあ、それはあなたの登場する物語を読めば分かるでしょうね。
 しかしほんと、あなたって苦労してんのねぇ〜」

ゼイネスト
「薄幸の美少女か…絵の題材としては相応しいだろうけどな。
 ってんな事言ってる場合じゃない。さっさと本編について語るぞ」

アルティミス
「あ、う、うん…。
 え、えっと…け、けんかはよくないと…思う」

ノーテュエル
「ズル―――っ!」(こける)

ゼイネスト
「どうしたノーテュエル、何をずっこけている」

ノーテュエル
「なんでそういう感想が出てくるのよあなたは―――っ!」

ゼイネスト
「あ、バカ!」

アルティミス
「はぅ!」
(目にじわり、と涙が溜まる)

ノーテュエル
「ああもう、泣かないでってば〜。悪かったわよ〜」
(あせあせ、なでなで)

アルティミス
「…うぅ…」
(なんだかんだで落ち着いた)

ゼイネスト
(ふむ、ノーテュエルの意外な弱点を目にした気分だな)

ノーテュエル
「…そこ、何を傍観してるのかしら?しかも楽しそうに」

ゼイネスト
「おっと失礼」
(もう少し楽しませていただきたかったんだがな…)






アルティミス
「『賢人会議』さん…と、シティさん…がぶつかりあっちゃった…」

ノーテュエル
「まあ、互いに大儀はあるからね―。そうなったら必然的にぶつかるしかないのよね」

ゼイネスト
「太古より人は戦う生き物だとよく言われるが…未だにその楔を絶つ事が出来ないとはな。やはりこれは人が人としてもつ業というものなのかもしれないな」

アルティミス
「由里さん…ついに…仇の…サクラさんと出会って戦うの…」

ノーテュエル
「んー、でもさ、由里はサクラに勝てると思う?」

ゼイネスト
「いや、それ以前に、由里はどういった能力の持ち主なんだ?『悪魔使い』の系列らしいという事はこれまでの流れで分かっているんだが…」

ノーテュエル
「違うわゼイネスト、おそらく由里も『魔術師』よ。だって、あの論の妹なんだもの」

アルティミス
「魔術師…え、えと、手品師さん?」

ノーテュエル
「あはは、違うってば(苦笑)」

ゼイネスト
「…しかしまあ、由里は論と違って随分と戦闘向きじゃない性格だと思うんだが」

ノーテュエル
「外見もね。ていうか白いしね」

ゼイネスト
「…MELTY BLOODが頭をよぎったんだが。これはレンと白レンの組み合わせなのかオイ」

アルティミス
「め、めるてぃ…ぶらっど?」

ノーテュエル
「まあ、とある格闘ゲームのお話。そんだけ。
 という訳で、この話は打ち切って終わり!以上!」

アルティミス
「?」







ノーテュエル
「さて、話を戻…そうと思って、ここでふと思ったんだけど…考えてみれば、ここまで主要キャラとか名前ありキャラとかが誰一人として死なずに済んでここまで来れたわよね」

ゼイネスト
「寧ろ前作が死にすぎだ」

ノーテュエル
「言えてる」

ゼイネスト
「だが、戦いが始まってしまった今、今回も誰かが死ぬのは避けられない事かもしれないぞ…先にも言ったが、どっちも譲れないものを持っての戦いだからな」

アルティミス
「でも、それでも、誰かが死んじゃうのは…いや…」

ノーテュエル
「…こんな世界であってもそんな事が言えるなんて、アルティミスは優しい子ね」

アルティミス
「…そう、なの?」

ゼイネスト
「ああ、その通りさ。
 …なあ、こうしてると、なんか、保育士の気分なのは気のせいか?」

ノーテュエル
「どーなんだろうねw」

アルティミス
「ふぇ?」

ノーテュエル
「あ、アルティミスは気にしなくていいから、ね」

アルティミス
(こくん)











ゼイネスト
「んで、次はなんだっけ?」

ノーテュエル
「アルティミスー、言っていいわよ」

アルティミス
「え、あ、アルティミスが…言っていいの?」

ノーテュエル
「いいからいいから」

アルティミス
「わ、わかり…ました。
 つ、次のお話は…『火蓋が切られる時』…だそう…です」

ノーテュエル
「んー、一見するとおどおどしてるけど、すっごい新鮮に感じるわ。その言い方」

ゼイネスト
「まあ、こういうキャラが一人くらいはいてもいいよなぁ、とは思ったりもするけどな。時折だけど」















<こっちもTo Be Contied〜>




















(あってもなくてもどうでもいいような)作者のあとがき>



…やっと本格的に戦いの火蓋が切られました。
いやはや、ここまで来るのに長かったことまあ。
掘り下げをしすぎたかな?でも前回の教訓を生かすと、こんくらいやんないといけないと思いましてね。


さてさて、様々な場所で行われた戦いの結果はどうなるか。
次回以降をお待ちくださいませ〜。


短いですけど、失礼。









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Moonlight butterfly


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