FINAL JUGEMENT
〜矛盾〜





























第三次世界対戦が始まるまではフランスという国があった場所に作られ、長い間放置されていたわりにはかなり設備の整っている、本来の主亡き研究所跡の分厚い扉を前にして、クラウが口を開いた。

「―――ねえイントルーダー、話があるのだけれど」

「いきなりどうした?俺はこいつの解析にもう少し時間がかかるんだ。話なら手短に頼む」

めぐるましく変化する巨大なディスプレイを眺めながら、左手を頭に置いて目を瞑ってため息一つ。

脳内でデータの解析をしながら、顔だけをクラウの方へと向けて返事をするイントルーダー。

二人は今、『もう一つの賢人会議』のコンピュータに隠された極秘データの解析に勤しんでいた。

『もう一つの賢人会議』を巡った、様々な謎を解き明かす為に。

そして、数週間前の戦いの末、消息不明となった少女―――シャロンの行き先を探すためにだ。

もしかしたら、シャロンを見つけ出すためのヒントがこの中にあるかもしれない…という淡い期待もある。

…で、今はそのために集中しているのだから、横から話をされても反応に困る。

「でも、その『解析している間』は結構退屈でしょう?
 だから、こういう時間を少しでも無駄に使わない為にも、会話を挿むのも必要だと思うのよ」

「…まあ、このデータの中身も大方ハズレだろうしな。それに、退屈という点には同意ではある」

ふう、と小さく溜息をつくイントルーダー。

正直、今まで大量のデータを解析したのだが、その殆どがハズレ、つまり、どうでもいい情報ばかりだった。

さすがは『もう一つの賢人会議』だ。重要データを守る為のダミー率も恐ろしい…と、イントルーダーはどうでもいいことを考える。

「話が早いわねイントルーダー…んじゃ、本題に入るわよ」

ふう、と軽く息を吐いた後に、クラウは静かな声で告げた。

「あなた確か、前にシャロンの位置が分かるみたいな事言ってなかったかしら?確かそれで、ノーテュエルとゼイネストが死んだのに、シャロンが生きてるって事を確認できたはずよ。
 でも、なんで今はそれをしないの?」

クラウの質問に対し、イントルーダーは額を押さえた。

黙ってても状況が進展しないと判断し、正直に話すことにする。

「それなんだが…どうやら、あの時シャロンを敵としてみなしてしまった際に、シャロンの生存を確認できる為のプログラムが解除されてしまったようだ。
 俺もああなるとは思ってなくて、シャロンに再アクセスしていなかったからな…。
 今思うと何とか再アクセスしておくべきだったが…悲しきかな、人はいつでも後悔して学ぶものなのだ」

「私はイントルーダーじゃないから、イントルーダーの脳内にどんなプログラムが入っているかは完全に把握できてないけれど、とても特殊で難儀な能力みたいね。なんでわざわざ、敵とみなした際にプログラムが解除されるような面倒なプログラミングをしたのかしらね?」

「寧ろそんなのは俺が知りたいほどだ。全く、我ながら融通の効かない能力さ…で、他には?」

「そうね―――後は、ノーテュエルとゼイネストに謝らなくてはいけないわって思ったの」

「…謝る?なんだ、金でも返し忘れたのか?」

「茶化さないの」

鋭い目つきでぎろり、と睨まれた。

「…結局、シャロンはあのまま行方不明だったじゃない。そして今、シャロンがどこにいるか、消息の欠片すら分からない。
 ―――だけど、絶対にシャロンを見つける…その事を、あの二人にも伝えておこうって思ったの。
 幸い、シャロンを連れて行ったと思われる人物の特定には成功したわ。
 だから、近い内に、絶対にシャロンを見つけてみせるわ」

「ああ…そういう事か。
 そうだな。残された俺達に出来るのは、それ位しか無いからな。
 それに、『もう一つの賢人会議』との戦いのせいで、墓参りを一度たりともやっていなかったからな…そろそろ頃合かもしれん」

イントルーダーは天井を仰ぎ、思い返す。

あの戦いで失われた、二人の命。

クラウにとっては、幾度手合わせをしたライバル達。

イントルーダーにとっては、ノーテュエル・ゼイネストの二名に会った事こそ無いが、それでも『もう一つの賢人会議』での仲間というべき二人。

「そういう事。で、この後行ってみようって思ったんだけど、いいかしら?」

「―――ふむ」

しばしの間、顎に手を当てて考え込んで思案をめぐらせた後に、

「―――まあ、お前がそういうなら、いいんじゃないのか。解析が終了するまでにはまだまだ時間がかかるようだしな」

あっさりとクラウの意見を認めた。

「つい先ほどパスワードを入れたのよね。じゃあ、後は放置で大丈夫ってことかしら?」

「ああ…しかし、なんと難解なパスワードだ。
 この『もう一つの賢人会議』内を調べてもそれらしいものはさっぱり見つからず、諦めかけた時にやっとみつかったほどだ」

ANETURA…だったわよね?」

「ああ、何の心算か知らんが、最初に順番を間違えた時はご丁寧に『順番が違います』とか出て来たぞ…。
 正直、人をおちょくっているのかと思ったぞ」

「まあいいんじゃないの?結果的に正解だったわけだしね。普通、ここまでたどり着く人がいないって分かっていて、こんなのにした可能性もあるわけだし…まあ、この解読コードの法則性はさっぱり分からないんだけど」

「そうだな…一々考えていてはキリがない―――さて、そろそろ向かうとするか」

「そうね。作業の方は管理者権限でイントルーダー以外の人間が途中キャンセル出来ないようにしてあるんでしょ」

「勿論だ。邪魔などさせてたまるか」

そう告げて、イントルーダーも立ち上がった。
















…そして、一旦手を休めたクラウとイントルーダーは、かつてシャロンと再会したかの地へと赴いた。

ノーテュエルとゼイネストの墓があり、二人が眠る研究所跡。





















―――だが、そこで二人を待っていたのは、更なる異変だった。





















お墓参りをする以上、どう考えても明るい気持ちになんてなれない。故に二人とも目的の場所までたどり着くまでは終始無言だった。
―――だが、嘗てシャロンが必死で作ったお墓の前まで来たとき、二人は驚愕した。























「嘘でしょう!?
 ――何よこれ…何で、こんな事が起こっているのよ…」

「―――これはどういう事だ!?
 人としての道徳があれば、このような事をする輩は普通ならいない筈だというのに!!」















目の前で起こっていたことは、二人の予想を遥かに超えていた。


















―――ノーテュエルとゼイネストの墓に異変があった。


―――何者かに掘り返されて、そして埋めなおした跡が、まだしっかりと残っていた。
















「…っ!!」

歯を食いしばり、二人の墓へとクラウが駆け出した。

「おいクラウ、どうする気だ!!」

イントルーダーが静止の声をかけるが、クラウはそれには答えない。

クラウとしても、シャロンが作ったお墓の中を掘り返すのはかなりの罪悪感が伴った。

だが、それでも確認したいことがあった。

研究所内にあったスコップを持ち出し、掘り返された土を丁寧に掘りなおして、二人の遺体のありかを確認する。流石に素手で掘る気はしない。

がつっ、という音と共に、スコップの先端が硬いものに当たる。

強化カーボンで作られた棺代わりの白いケースの蓋に手をかける。

(お願い…どうか、嫌な予感は外れてて…)

知らずのうちに、心臓がばくばくと高鳴る。

今のクラウは、心の内に思った不安が具現化してほしくない気持ちでいっぱいだった。

目を瞑り、震える手で蓋を開ける。

そして再び目を開けた時、目の前には現実が訪れた。











「二人の…遺体が…無…い…!?」












「――――これは…」

後から追いついたイントルーダーも、その光景を見て呆然とする。目の前の光景を信じたくないと、その瞳が告げていた。

「…ねぇ…なんでよ…どうしてよ…どうしてこうなってるのよっ!!」

震える言葉。両手で目を押さえて、クラウが泣き崩れた。

…二人の目の前にあるものは、防腐剤と脱臭剤が詰め込まれた、強化カーボンで作られた白いケースだった。

そう、本来居るべき二人の肉体が、まるで消え去ってしまったかのように無くなっていたのだ。









クラウの意識が、徐々に遠くなる。

体中から力が抜けて、膝を突き、そのまま倒れた―――。













身体が誰かに受け止められたのを確かに感じた。

誰かが自分の名前を呼んでいるのが聞こえたが、答えることは叶わず、クラウの意識は闇の底へと落ちていった―――。



















【 + + + + + + + + + 】





















「―――目は、覚めたか?」

「………」

聞きなれた声と共に、意識が現実に引き戻された。

目を開けると、見慣れた景色が目に入る。どうやら、『もう一つの賢人会議』の研究室に戻ってきていたらしい。

「…あれ、ここは?」

「説明する必要なんて無いと思うぞ。もう見慣れた景色だろうに」

「そう、ありがとう…。
 じゃない!あの後、私が気を失っている間に何があったのよ!」

はっ、と顔を上げ、クラウはイントルーダーに詰め寄った。その復帰の速さは、ついさっきまで気絶していたとは思えない。

「落ち着け。
 …そうだな。言うなれば『何も進展はない』といったところか。
 近場一キロほどを探したが、二人の髪の毛一本すら落ちていなかった…どうやら二人の遺体を持ち去った奴は、相当な注意力を効かせていると言っても過言ではないだろう」

「ちょっと引っかかる言い方だと思うけど、まあ、大体の事は分かったからそれでいい事にしておくわ…。
 で、イントルーダーは今『近場一キロほどを探した』って言ってたけど、その間、気絶していた私に対しては何をしていたの?」

にこり、と、クラウが口の端に笑みを浮かべた。

まさかとは思うが、イントルーダーがクラウを放置したまま二人の手がかりを探していたなんてことだったら流石にだまっていられない。その時は間違いなく鉄拳制裁を繰り出す心算だ。

「ん?ああ、放置しておくわけにもいかないからおぶって連れてたが、何か問題でもあったか?」

で、イントルーダーはあっさりと答えた。

「おぶったって…あ、あなた…」

放置されてなかったという事が分かって一安心すると同時に、今度は別の感情が沸きあがる。

イントルーダーにおぶられていたという事実が、クラウの胸の中になんとも言えない感情を沸き起こさせる。

「…ま、まあそれは置いておいて、だ」

「話を逸らさないの」

イントルーダーが逃げようとしているのが目に見てわかるので、追撃。

だが、イントルーダーは先ほどの惚けたような顔はどこへやら、今度は引き締まった顔でクラウに向き直った。

「待てクラウ、これは本当に大事なことなんだ。
 先ほどパスワードを入力したデータの解析が終了した。
 そして、クラウが気絶している間にそれを読んで…予測だにしなかった真実が発覚した。
 よって、話せる内に話しておくべきだと判断したんだ」

ただならぬ空気がまとわりつく。

「あの時は、俺も確信が持てなかった。それ故に、真実を追究する時間もなかった。
 だが今は違う。明かされたデータが全てを教えてくれた」

「…だから、何がよ」

イントルーダーの話を聞いても尚、クラウは少々苛立っている。

無理もないだろう。イントルーダーがお茶を濁したような言い方をしているのだから。或いは、わざと要領の得ない言い方をしているとも取れるが…。

「そうだな…ここまで言っておいて要領を得ない言い方をしたところで意味など無いな。なら、正直に言ってしまおう。
 『賢人会議』が誕生したのは四年前…そして『もう一つの賢人会議』が誕生したのも、それと同じくらいだ。これは正解だろう。
 …だから、お前がそのまま二十歳でいられるわけがないんだという事だ」

「…え?」

何を言われたのか分からないような顔になっているということを、クラウ自身が感じ取っていた。

だが、そんなクラウに構わずイントルーダーは話を続けた。

「そう、矛盾が生じるんだ。それも、色々な点で」

クラウの肩が震えて、冷や汗が一滴頬を伝った。

















「―――結論から言おう。
 



 …クラウは、自然発生の魔法士なんかじゃない。偽りの…ただの先天性魔法士だ

















「―――え?」

小さく口を開け、呆然とするクラウ。

何を言い出すのだこいつは、という考えと、それはどういう事だ、という考えとが同居する。

「クラウが培養層じゃなくて、人の胎内から生まれたというのも、ミライア・ソラスやカナス・ソラスやイオス・ソラスの事も、全ては作り話だったという事だ。
 盗み見た『賢人会議Seer's Guild)』…いや、今では『もう一つの賢人会議』か。そこの極秘データに書いてあった…と、前にクラウに出会った時に説明したよな」

「…え、ええ」

クラウの発言には、覇気がない。今までの前提が全て覆されるような発言をされたから当然といえば当然なのかもしれない。

「あのデータ自体が作り物だった。クラウのオリジナルな記憶なんて最初から存在していなかった」

イントルーダーの顔はいたって真面目なものであり、嘘をついていないことが見て取れる。しかしそれでも唐突過ぎる発言にクラウの脳がついていっていないのも事実だ。

正直、クラウ自身、自分の生い立ちに疑念を感じていた。

世界で最初に発生した魔法士とか言われて舞い上がっていたが、よく考えればそれはとても不自然な事なんじゃないだろうか。

だが、だからといって何時までも現実逃避していても始まらない。

現実と向き合わなければならない。謎は解き明かされなければならないし、クラウは己の真実について知らなくてはならない。

「あ、あはは…な、なによそれ、わ、私が自然発生の魔法士じゃない?
 じゃ、じゃあ、私はなんだって言うのよ!」

認めたいという思いを、渇いた笑いで誤魔化す。

「すまない、本当にすまない。俺も、完全に騙されていた…正直、もう何を信じていいかすら分からなくなる。この世が嘘で作られているんじゃないかと勘ぐった程だ」

イントルーダーは深々とお辞儀をして、謝罪する。

それを見ると、クラウの心の中で、少しだけだけど罪悪感が生まれ出る。そう、イントルーダーの態度は正に真摯のそれであり、先に告げられた真実だって、本来なら笑い飛ばすで済んでいいものではない。

だが、イントルーダーはその件については追求などしなかった。おそらく、クラウが馬鹿正直に信じるわけは無いと踏んでいたからこそ、否定されても文句の一つも言わなかったのだろう。

「…続けるぞ。
 ―――で、俺があの極秘データに書いてあった通りにクラウを二十歳と思った根拠がここにある」

そう言って、踵を返したイントルーダーは、たくさんある机の中から一つの机を選び、その引き出しの中からプラスチック製の白いケースを取り出した。

「…それは?」

「まあ、開けてみれば中身が分かるさ」

疑念に狩られ、プラスチック製の白いケースをまじまじと見つめるクラウ。

そんなクラウに見られながらも、イントルーダーはプラスチック製の白いケースの蓋を開けた。

「これだ。これがクラウを二十歳だと思った証拠だ。『もう一つの賢人会議』内でこの条件に当てはまるのは、クラウしかいなかった」

「ふーん、これがねぇ…なんでこんなのがあるのかすっごい疑問だけど、まあ、今はそれはおいておいて…」

そう言って、クラウはプラスチック製の白いケースの中にあった『それ』を手にとってみる。











…だが、刹那、クラウは顔を曇らせて告げた。










「――――これ、私のなんかじゃないわよ…」










「―――なんだと!?」

イントルーダーの顔が驚愕に染まる。

「そんな馬鹿な!
 この『もう一つの賢人会議』の中にいる魔法士で、その特徴に一致するのはクラウしかいないんだぞ!だから俺はクラウが二十歳だと思ったんだが…本当に違うのか?」

「ええ、残念だけと、これはれっきとして私のじゃないわ。だって、手触りが違うもの…」

「…そんな…いや、そうか、だから………」

イントルーダーが頭を抱えたが、その後、直ぐに『何かに納得した顔』になる。

要領を得ないイントルーダーの喋り方に、クラウは僅かな苛立ちを覚える。

先ほどから彼自身しか分からない会話ばかりを繰り返しており、クラウにその全貌を明かそうとしないのだ。非常に言いにくい事なのだろうが、クラウとしては、すっきりしない事の方が嫌いなのだ。

「いい加減、自己完結型な弁論は勘弁してもらいたいんだけど?
 さっき言ったじゃない。全てを話すって。その言葉は偽りだったの?」

「…お前を心配してるんだが」

「そんなの必要ないわ。寧ろ、私としては隠し事される事の方が腹立つもの。
 で、結局は何なの?」

「…ふ、違いない、そうだったな。
 全く、俺は何を悩んでいたのやら…要らない心配だったようだな」

ふう、と、目を閉じたイントルーダーは、リラックスするように小さく一息吐く。

「なら話そう―――全ては、一つの実験の為の、とてつもなく抜かりのない準備だったんだ

クラウは答えない。イントルーダーの話に完全に聞き入っている。

「クラウ、一つ聞きたい。
 俺の考えた推論が正しければ、お前の記憶はかなり曖昧なもののはずだ。
 …まず一つ。お前の家族は、お前が生まれたときの事を話してくれたか?」

「ん、とりあえず、思い出してみるわ」

そう告げて、クラウは目を瞑った―――I−ブレインの中の記憶を掘り出す為に。

















イントルーダーの口の端が、笑みを浮かべていた。

否、寧ろ、笑みを堪えていた。

目を瞑って過去の事を思い出すクラウのその表情が、浮いたものになったり赤く染まったり悲しみにくれたりと、はたから見ていて面白いものではあるが、ここで笑うと間違いなく『一撃必殺超振動拳グラドニックウェポン)』が飛んできそうだったので、イントルーダーは黙秘を決め込んだ。

(…ん?)

そういえばこのような状況は前にもあった気がするな、と、イントルーダーは思い返す。

そう、あれは確か、クラウと出会ってから間もない頃―――。

とあるビジョンが、鮮明に脳内に呼び起こされて自動的に再生され、

「…だから、自分で顔がにやけてる事に気づいてる?イントルーダー?」

いつの間にか目を開けてにこにこ、と能面のような笑みを浮かべながらも、拳に僅かな振動を走らせているクラウの姿が目に入ったので、脳内再生に強制的にストップをかけた。

「わ、悪かった。
 …それで、先ほど俺が聞いた質問に対する答えはまだか?」

やんわりと謝りつつ、話を元に戻す。同時に、鋭いな、と、心の中で舌打ちをした。イントルーダーが思い出したのは、偶然と不可抗力とはいえ、クラウのお風呂上りに遭遇してしまったシーンだった。あれを忘れてしまうのは、男としてはありえない事態だろう。うん。















とりあえずイントルーダーに釘をさしてから、クラウは改めて口を開いた。
「…でも、やっぱりよく分からないわ。
 なんで私に子供の頃の記憶があるのか、それすらも原因が特定できないんだもの」

そう、いくら考えても、クラウはクラウにとって納得のいく答えを出す事ができなかった。全ての記憶は一連にして繋がっており、途切れた部分などほぼ存在しない。

「…ふむ、やはりこうなったか。いや、寧ろ、そうでなければ嘘というものだ」

「ちょっと、それって、まるで私が最初から答えられないってのを知っているって言い方じゃないの」

「当然だ―――というより、クラウが答える事ができる方がおかしい」

「だから、何が言いたいのよイントルーダーは!さっきから訳の分からないことばっかりじゃないの!」

ちょっとだけヒステリックに叫ぶ。すると、イントルーダーはすっ、と目を細めた。

「―――そして、それこそが、クラウが作られた目的だったとしたらどうなる?」

クラウは、イントルーダーの意図が分からない。という感じで首をかしげる。

「…それはどういう事よ。話がまったく分からないわよ!?」

よりヒステリックにクラウが叫んだ。確かに、こんなに回りくどい言い方をされては、苛立ちが募らない方が不思議だ。

ふぅ、と軽く息を吐いて、イントルーダーが静かに口を開く。その目は、何かに絶望を感じたような、そんな人間の目だった。

「そうだな…長々と語ってしまって済まないな。
 本当を言うとな、俺は、この事をお前に知らせたくはない。
 しかし、真実はいつか知らねばならない事だ―――ならば今こそ告げようか。クラウ、お前の真実を」

イントルーダーは、近くにあったディスプレイの電源を入れる。解析したデータの内容を別ウィンドウで表示しようというのだ。





















…最初に映った文字は、以下のものだった。


















―――『記憶回帰リターンメモリー計画』―――














…その文字を見たとき、クラウの中で、とてつもなく嫌な予感がした。








【 + + + + + + 】
















文字が少しずつ消えていき、次に映っていたのは、白い無地の服を着た一人の女性が培養層で眠っている写真だった。

「…これは、私!?」

目を見開き、驚くクラウ。

「おそらくそうだろう。外見的にもクラウ以外とは考えにくい…と、製作者の記録のようなものが出てくるぞ、絶対に見逃すなよ」

「当たり前でしょう…さて、鬼が出るか蛇が出るか」

「クラウにとっては、それすら遥かに凌駕するものだと思うけどな」









―――その写真の上に、文章の羅列が表示された。















『―――今現在をもってしても、マザーコアとなるべくして多くの魔法士が作られる。以下、彼ら・彼女らを『マザーコア被検体』と呼ばせてもらう。
マザーコア被検体は、死ぬ為に生まれてきた命と言っても過言ではない』


















イントルーダーとクラウは、ディスプレイに写された文字を黙って読む。



















『しかし、それでは、マザーコア被検体があまりにも可哀相過ぎる。
そこで私は、マザーコア被検体達に対して、なんらかの救いを与えられないかと考えた』

















この辺りは、イントルーダーもクラウも知っている内容だから、別段驚くような事ではない―――ただ、最後の一文は聞いたことのない内容だ。














『そして私は考えて、一つの答えにたどり着いた。
マザーコア被検体は、寿命を迎えずして死ぬのが怖いのだ。なら、それを取り去ってしまえばいいと。即ち、死を克服してしまえば言いと』















「…死を克服するだと?どういう意味だ?」

「…お願いだから黙ってて」

「…済まなかった」













『その研究の為に素材を探す事三週間、丁度よく、記憶基盤といえるものが手に入った。
 ある日、外に出てみると、この『もう一つの賢人会議』の外で、一人の青髪の少女が倒れていた。外見年齢は16歳ほど。記憶が正しければ、確か数日前まで、この『もう一つの賢人会議』にいた子だ。
 涙が出てきた。
 だって、この子は、細かい事は何も聞かずに自分を慕ってくれた子だったから。
 …また、不本意とはいえ、『記憶回帰計画』を進める為の最高の機会が生じたという意味でもあった。それに、自分の個人的な感情もあって、是が非にでも成功させたかった。
 そして、その子のI−ブレインを取り出すと、脳内にはまだ記憶が残っていた。おそらくだが、肉体が死んでしまっても、I−ブレインが完全に破壊されない限り、記憶は残るものなのだろう。
 そして、これから『記憶回帰計画』の為に作る魔法士も、この子とそっくりの容姿にする事にした。記憶の中の自分と現在の自分を見て、矛盾が生じないようにするにはそれが最も手っ取り早いし、自分も、この子の容姿を変えるのは、個人的に反対だった。
 ―――かくして、計画は実行された。
 少女の記憶を、まだ何も書き込んでいない、まっさらな状態のI−ブレインを持つ、全く別の素体へと完全移植する計画だ』











再び、二人の間に沈黙が訪れる。












『計画は、非常に順調に進んだ。
 I−ブレインの中身を新たな魔法士の素体へと移植する段階まで、何の問題もなく進んだ。
 念のために確認を行っても、イレギュラーな事態が全く起こらず進んでいることが確認できた』










さらに、沈黙。言葉が出てこない。











『『もう一つの賢人会議』のデータベースで調べてみると、どうやらこの子は、第三次世界大戦前に生まれ、生まれてから直ぐに脳にI−ブレインを埋め込んだ魔法士という事だった。正直、あの大戦を生き抜いて、今まで生きてきたというのが不思議で仕方がないけれど、事実は事実だ。
 しかも、この子は世界中でも珍しく、素手で戦う事を得意とする少女だった。だから、その能力名や性能も、私の持てる科学力を最大限に活かして、ほぼ完璧に再現させた』









沈黙が、続く。

二人の頬や額には、うっすらと冷や汗が浮かんでいた。









『―――さらにこの子は、以前、ワイスらとなんらかの形で衝突していたらしい。これもまた、この計画を順調にさせる一つの要因である。何故なら、再び目を覚ました時に、矛盾が生じなくて済むからだ。
 また、偶然だが『エクイテス』という、全く同じ名前の、全く違う人物との出会いもしていたという話だ。
 そして何より、ここまで細かいデータが『もう一つの賢人会議』のデータベースに纏められている事に最大の感謝を送りたい。全くもって、セレニアには感謝しなくてはならない。
 ―――そして、これなら大丈夫、これならできる。
 『記憶回帰計画』は、絶対に成功する』
















クラウの顔が、段々と青ざめていく。

イントルーダーの顔に、陰りが生じていく。

セレニアとは誰なのか、という疑問もあったが、二人はその疑問が殆ど気にならないほどに、目の前のデータに集中していた。

そして、西暦2194年1月2日、データの記述が最終更新を告げていた日。

文章のまとまりが、最初の頃に比べてやや乱れていた。おそらく、急いで打ち込んだ結果だろう。

クラウとイントの二人は、ディスプレイを凝視したまま微動だにしない。

地面に落ちた強化カーボンの欠片が、小さな音をたてた。

弾かれたようにイントルーダーの手が動き、一番古いファイルを呼び出す。













『そして







『記憶回帰計画』は成功だった。
 私は、とある理由があって、少女の前ではちょっとした変装をしていた。望んだ事とはいえ、生命への冒涜に等しい事をしてしまっていたという自覚もあったので、少女の前に素直に姿を現すのは躊躇われた。
 目を覚ました少女は、しばらくはぼうっとしていたが、やがて、生前とほぼ変わらぬ姿で行動をし始めた。少女の事は『もう一つの賢人会議』内部の人間には話してあったから、周囲の人間も、少女に関しては、生前と全く同じ態度で接してくれていた。
 嬉しかった。あの子が、帰ってきてくれたから。
 でも私は、後ろめたい気持ちから、結局、その子の前には、姿を現す事は出来なかった――――――。






 そして私は、禁じられた領域であることを覚悟した上で、この『もう一つの賢人会議』で最もやりたかった事の第一歩を、ついに実行する事にした。
輪廻の命ライフリバース計画』を実行に移すだけ。
 此れをもって『記憶回帰計画』についてのレポートを終える。






 ああ、そうだ。
 この子の名前を載せるのを、最後の最後まで忘れていた。
























 ―――『記憶回帰計画』第一被験者…クラウ・ソラス。
 ―――尚、オリジナルである『クラウ・ソラス』は、享年16歳で死亡している。
 言うなれば彼女は…『クラウ・ソラス』の記憶や能力を受け継いだ複製コピーである』













「…あ」

その文字を目の当たりにした刹那、ぐらり、とクラウの視界が歪んだ。

今此処にある現実が現実でないような、そんな感覚。

立ちくらみにも似た感覚を覚え、足がふらつく。

「よっ、と…」

倒れこんだところをイントルーダーに抱きとめられる。

「大丈夫…じゃないよな。当然だけど」

見上げた先には、心配の色を欠片も隠さないイントルーダーの顔。

「ねぇイントルーダー…これ、全部本当なのよね」

あはは、という渇いた笑いと共に、喉から小さな声を絞り出した。

まるで夢の中に居るような感覚。今この時が現実でないような、そんな感覚。

いや、きっとクラウは自分でも気づかない内に、現実から逃避していたんだと思う。

夢であればよかったのにという思いが、現実への認識を遮っている。

「…真実だ。間違いなく」

だが、その遮っている壁は、イントルーダーの発言でガラスのように砕け散り無へと帰す。

「…じゃあ何?
 私は『クラウ・ソラス』って子の記憶だけを受け継いだコピーで、しかもオリジナルの私は本当は四年も前に死んでいた…そういうこと?」

口元に渇いた笑みが張り付いているのが、嫌でもわかる。

いい加減に現実を認めろと心のどこかが叫んでいるが、それと同時に、これは夢なんだ、起きれば冷める悪い夢なんだと、また別のところで心が呟いている。

クラウの瞳の光が消えていく。

全てがどうでもよくなったような、このまま楽になりたいような、そんな感じ。

いや、いっそ楽になった方がいいのかもしれない。甘美な誘いに乗って、幸せなままでいれればいいのかもしれない。

―――だが、クラウのそんな甘美な欲望は、イントルーダーの叫びによってかき消された。








「落ち着けっ!
 そして現実を見据えろクラウ!まだ…まだやる事があるだろうが!
 ライフリバース計画とかいう更なる計画の名前が、今、確かに明かされている!
 これはもしかしなくても、ノーテュエルやゼイネストらに関係あることかもしれないんだぞ!そして今、それを解析できるのは俺達しかいないんだ。だから…!」








「…っ!」

全てを捨て、何処か遠くの世界に旅たとうとしていたクラウの瞳に光が戻る。

「…今からその『ライフリバース計画』についての記述を開く…これは俺も調べていないから、何が書いてあるかは分からない。だから、覚悟はしておいてほしい」

「…うん」

弱々しい返事しか出来ない自分に一瞬腹がたったが、少なくとも今のクラウには、それくらいしかできなかった。

先の『記憶回帰計画』のショックはやはり大きく、直ぐに立ち直れというほうが無理だというものだ。

だが、今はそれよりも大事なことがある。

イントルーダーが開かんとしている『ライフリバース計画』の正体を知るという、大事な事がある。



















―――そして今、『ライフリバース計画』のファイルが開かれた。


















【 + + + + + + 】




















「…………………………」

「……………………」

…その内容から、二人は目を逸らす事が出来なかった。

喉がからからになったような感覚が襲い掛かり、声が出せなかった。

そんな中、イントルーダーが口を開いた。

「何だこれは…まさか、これは何年も前から綿密に計画されていたプロジェクトだったというのか…」

「イントルーダー…」

クラウの声は震えていた。その目じりにはかすかな涙が浮かんでいる。

「今更こんな事いうのもなんだけど…これ、嘘じゃないわよね。事実なのよね」

「嘘な訳が無いし、信じたくても信じたくない…。
 俺達と―――生きているかもしれないシャロンを除き、今は亡き『もう一つの賢人会議』の魔法士達が聞いたら、目の色変えて激怒する筈だ」

「そんなのは当たり前よ…。私だって、こんな事の為にみんなを実験台にしたこの記録の書き手に対して、怒りを覚えているんだから」

「同意しよう。俺もだ。
 …そして何より、これはなんだ」

その一文を見て、イントルーダーは歯噛みする。

日記の最後には、ご丁寧にもこのプロジェクトの、この日記の製作者の名前が記されていた。

普通なら書かないか隠滅するであろう製作者の名前が記されていたという事は、この世界のどこかにいるそいつを探し出せという事か。或いは、自分がその行動を実行したという証拠を残しておきたかったのか。それとも、ただの日記として纏めておきたかったのか。

現段階では真実など分かりはしないが、それでも、手がかりがあったという事は、またとないチャンスだという事を脳内で理解した。

「…おい、この名前は」

「―――私だって聞いた事のない名前だわ。私だって、この『もう一つの賢人会議』に、全部で何人いるかすら分からないんだもの。現に今でも、セレニアっていう、私の知らない名前が出てきたんだし。
 だけど、これで手がかりの尻尾だけでも掴んだわね。
 現状では真相は闇の中。だが、だからといってこのまま手をこまねいて見ている訳にもいかないわ」

「くそ…こいつが今の世界の何処にいるかだけでも分かればいいのだが…」

「きっと、探すのには大変な労力がいるでしょうね―――だけど、絶対に探し出してみせるわ…」

「ああ――そうだな。絶対に許すものか…」

クラウは拳を握り締めて、イントルーダーは冥衣の端を強く握った。













「―――そこまで」














刹那、背後から、聞いたことのない声がした―――。













【 + + + + + + 】













―――そこに立っていたのは、人影だった。

「…誰ッ!?」

「何者だっ!」

振り向きつつ体制を整えるクラウとイントルーダー。

その人物は、二人からおよそ四メートルほど離れた場所に立っている。そこまで気づかなかった事に疑念を覚えたが、今は目の前にいるこの人物に対しての対処の方が優先だと判断し、警戒を緩めない。

刹那、その人物が口を開いた。全身をマントのようなもので覆ったそのいでたちは、はたから見ていて物凄く怪しげな空気を此方に感じさせる。

「少なくとも、この場で自分の名前を明かす訳にはいかない。
 だけど、あなた達はそれに触れてしまった。だから、今更隠しても無駄だと思うから、告げる。




―――私は、『記憶回帰計画』の実行者」

淡々として、それでいて感情を感じさせない冷たい声。

だがクラウにとっては、その人物が口にした言葉の内容の方が遥かに重要だった。

「…『記憶回帰計画』!?
 じゃああなたが、あなたがあの計画の実行者ですって!?まさか『ライフリバース計画』も…」

「そう…もうそこまで調べてあるの。
 じゃあ、その答えを告げる必要なんて無いんじゃない?」

ふっ、という小さな笑いと共にさらっと言い放つ。

「…何故だ」

「ん?」

歯噛みするイントルーダー、最小限の仕草で振り向く謎の人物。

「何故こんな事をした。
 これでは、この計画の被験者は、まさにモルモットではないか…!」

手を振りかざし、叩きつけるように、叫ぶ。

謎の人物は、ほんの少しだけ口元を緩めて、かすかに自虐を帯びた口調で告げた。

「…全ては、少しでも多くの人に幸せになってほしいっていう思いからなの……でも、これで納得できるわけ…ないよね」

「意味が分からん」

「分からなくてもいい。あなた達はそれ以上を知る必要もない。
 …そして、あなた達は知りすぎた。
 だけど、あなた達の命を奪う真似はしたくない…」

「命を奪いたくない…ね。あなたがそれを言える立場なの?」

立ち上がったクラウが、声に怒りを混ぜて言い放つ。

「少なくとも、私は譲らないわ。私の知らないところで、嘗ての私を『記憶回帰計画』のモルモットにした事が許せない。
 それに加えて、全てを話そうともしないあなたの態度が尚更怒りを煽り立てるのよ。
 …だから、力づくでも喋ってもらうわよ。『ライフリバース計画』の全貌を含めてね」

拳を構えてファイティングポーズをとる。

「…普段なら止めたいところだが、今回ばかりはクラウに同意だな。
 一対二という勝負形式はあまり望みたくはないのだが、状況が状況だ、許せ」

イントルーダーも立ち上がり、『冥衣』の端を掴み、戦闘態勢に入る。

そんな二人を見た謎の人物の瞳が、フードの奥で鈍く輝いた。

「…そうだよね。こんなんじゃ、私…ううん、あたしだって分からないよね。
 ―――そして、話を戻して…生憎だけど、自分も負けられない…少しの間、眠って頂戴」













―――――――――その瞳が、本当に悲しそうなものに見えた刹那、戦闘が始まった。






























<To Be Contied………>















―【 おまけどころじゃない存在感になっちゃってるらしいキャラトーク 】―










ノーテュエル
「…なんていうか、急展開って言うより『唐突』って感じがしない?」

ゼイネスト
「そこは敢えて突っ込まないのがいいと思うけどな」

ノーテュエル
「ブリード達だっていきなり戦線離脱だし…まさか、このままクラウ達も戦線離脱!?」

ゼイネスト
「…そうならない事を祈ろう」

ノーテュエル
「でも、これで二人が負けたら、事実上の四人離脱なのよ…私、そんなのやだ」

ゼイネスト
「確かに、嫌なものだな。
 …と、そういえば前回も話したが、ブリードらをこれ以上この物語の戦いに参加させる予定は本来なら無かったという事らしいしな。
 何せこれからは『聖騎士』や『闇使い』…もとい『電磁使い』まで出てくる。そんな化け物達相手にブリードらが戦って、勝てる見込みがあると思うか?」

ノーテュエル
「…あ〜、そういう事ね。
 そりゃ、勝てなきゃ生き残っていけないわよね」

ゼイネスト
「勝てない奴から淘汰されていくのが世界だ。
 しかし、だからって殺すのは忍びない。だから前回のような措置が取られたってことだな」

ノーテュエル
「―――ちょっと待て、私達はなんなのよ!容赦なく死んだじゃないの!」

ゼイネスト
「能力が強力すぎたから早めの退場を、とのことだったらしい」

ノーテュエル
「むき〜!なんで〜!」









ノーテュエル
「あと今回、クラウの事を書き直していて、矛盾の多さに気づいたみたいだしね。
 なんでこんな物語書いてるの過去の自分!?みたいな感じになったみたいよ」

ゼイネスト
「昔の記憶などうすれゆくものだ。しかし、何とか繋げてはいるようだけどな」

ノーテュエル
「何とか…ね。
 まあ、それが読者様の理解に繋がるかはまた別問題だけど」

ゼイネスト
「…それは言わない事だ」









ノーテュエル
「でさ、次はどうなる訳?」

ゼイネスト
「次のタイトルが『集結』である事から、物語が新たな舞台へと進む事は間違いないと予想しておこう」

ノーテュエル
「あれ?クラウ&イントルーダーと、謎の侵略者との戦いはどうなるの?」

ゼイネスト
「それについては現状ではなんとも言えん。だが、近い内に答えが出ると、俺は思っている」

ノーテュエル
「それはいい方向で?それとも悪い方向で?」

ゼイネスト
「断言が出来ないな。結果は、やってみなくては分からないものなのだから」

ノーテュエル
「…むー、なんかうまい事うやむやにされた感があるわね〜。
 でもまあ、いいわ。例えどんな結果が待っていようとも、それがこの物語なんだから」

ゼイネスト
「ま、そういう事だと思っておけ。
 …ん?今日はゲストを召還しなかったな。何故だ?」

ノーテュエル
「んー、気分の問題」

ゼイネスト
「またまた分かりやすい理由だな」

ノーテュエル
「…で、今気分が変わったからポチッとな」

ゼイネスト
「…お前って奴は―――っ!」



















凶戦士ノーテュエル(Berserkerバーサーカー)/RP> Northuel) 
「―――裂いて砕いて叩いて切り刻む…そんな感じでどう?」

殺戮者ゼイネスト(Zeinest Destroyerデストロイヤー)/RP>) 
「―――なんでもいい…斬らせろ」














ノーテュエル&ゼイネスト
「何故に私(俺)の裏キャラが!?」














凶戦士ノーテュエル
「ハァイ、こんにちは。
 一度会ってみたかったのよ。本来の私」

ノーテュエル
「…そんな姿、私は見たいとなんて一瞬も思ってないんだけどね。目障りだからとっとと消えてほしいところなんだけど」

凶戦士ノーテュエル
「あら、私はあなた自身よ。
 本編ではそれ程描かれてないけど、周囲に結構な被害を出した、あなた。
 それを否定する事は、あなた自身の否定にも繋がるんじゃないの?」

ノーテュエル
「…」

凶戦士ノーテュエル
「図星で返答すら失ったの?
 ――――まあ、私としては、望んだのはそんなことじゃない。
 私が望むのは只一つ。この身を振るう事のできる戦場のみよ」

ノーテュエル
「…いいわ。だったら、私があなたを消してあげるから」

凶戦士ノーテュエル
「威勢のいい事ね。消されるのがどっちだか分かりもしてないで。
 いいわ。ぐだぐだとおしゃべりするのは好きじゃないの。
 全ては戦いの中で語る―――少なくとも、私はそういう生き物だから」
















ゼイネスト
「悪夢なら、覚めてもらいたいんだがな」

殺戮者ゼイネスト
「おやおや、俺を悪夢と認知するかオリジナル。
 俺はお前でありお前は俺である。その事実は如何様にしても覆らないさ」

ゼイネスト
「…違うんだよ。俺とお前じゃな…理屈も何にもなく、な」

殺戮者ゼイネスト
「自分だけは違うってか。いいご身分だな。
 その現実逃避がいつまで続くか…いや、続くわけがないか」

ゼイネスト
「…それはどういう意味だ」

殺戮者ゼイネスト
「決まっている。
 ここでお前を殺して、俺がお前に成り代わればいいだけだ。物凄く単純な理由さ」

ゼイネスト
「それこそが最大の悪夢だな。
 だが、冷めない夢はない。
 ―――何故なら、ここで俺が、お前を断ち切るからな」

殺戮者ゼイネスト
「やっと戦う気になりやがったか。
 最初からそうしてくれれば、こんな回りくどい真似はしなくて済んだんだけどな。
 そして生憎と、俺もそう簡単に殺されるわけにはいかない…ま、せいぜい楽しませてくれ」








―――こんなところで、戦いが始まった。















<こっちもTo Be Contied〜>




















(あってもなくてもどうでもいいような)作者のあとがき>









さてさて、やっと重要そうな単語が出てきましたね。
―――問題点は、読者の皆様がついてきてくださるかどうか…^^;


キャラが多いイコールこうなる訳で…もう大変ですわ。
これに本家が加わるわけだから…うわお、考えたくねェw
自分からカオスな道に突っ込んでどうするのだ私。


でもまあ、やっぱり、こうやってるのは楽しいわけなのです。
惰性とか苦痛とか、そんな心算で続ける心算はありません。
楽しくなければ続かないのは道理でしょう。


後は、体調管理に気をつけるって所かなぁ。
社会人はホント大変だぜ〜。


それでは〜。





○本作執筆中のご飯
うどん



<校正協力> 済谷さん
シグマさん
昴さん

<作者様サイト>
Moonlight butterfly


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