FINAL JUGEMENT
〜戦いから離れて〜










戦いを終えて、人間らしい生活を営む。

魔法士であるその身からすれば、やっと得た自由。

たとえそれが、一時だけの事だったとしても。











「…ふう」

四人がかりで朝ご飯の後の食器洗いを終えて、天樹論は自分にあてがわれた部屋へと戻ってきた。

何も四人で食器を洗う必要は無いのだが、居候の身である以上、手伝わないというのは常識的によろしくないだろう。

それに、四人で役割分担すると、楽しい上に異常に早く終わるというのも理由の一つだ。

時折、誰とは言わないが、お皿をしまう係りを担っている一名が手を滑らせてあやうくお皿を割りかけたりするというハプニングが起こったりもするのだが、ギリギリで割らずに済んでいる。








ベッドに仰向けになり、天井を見上げる。

…こうしていると、思い返してしまう。

―――今まで、自分が何をして、何のために生きてきたのかを。












【 + + + + + + 】












論の人生は、生まれた時から戦場だった。

培養層から目覚めた時から、世界というものを知っていた。

目を覚ました時、自分を創ってくれた科学者らしき人はもう居なかった。

培養層には、論が目覚めるに相応しい時期が来た時、論が自動的に目覚める設定にしてあったらしい。

だから、論は生まれた時から一人だった。

その研究室にあったのは、黒い戦闘服と、二本の騎士刀と、どでかいディスプレイと一つの大きな机。

机の上にあったのは『天樹健三』と書かれた一冊のノート。

手に取り、それを読む。

不思議な事に、論は生まれてこの方…というより生まれたばかりで文字なんて習った事がなかったのに、すらすらと読めた。

おそらく、培養層にいる間にデータを取り込んでいてくれたのだと、そう思うことにした。







そのノートには、自分の能力について書かれていた。

あらゆる能力を取り込み、無限に成長するI−ブレイン。

本来なら書き換え不可能なI−ブレインの基本領域を書き換える能力―――『魔術師』。

それが、自分の、天樹論の能力。

夢中になってノートを読みふけり、能力の使い方のイロハや、能力書き換えの方法を知った。

しかし、ノートの最後の最後に差し掛かった時、最後の一枚が何故か破られていた。

あの一ページに何が書いてあったのかなんて、今となっては分からない。

何か、とても大切な事が書いてあったのだろうか。

それは、論に知られては拙い事だったのか。

まさに、暗闇に葬られた黒歴史のようなものだ。

「…あのノートには、何が書いてあったんだろうな」

誰にともなく、一人、つぶやく。

――だが、今となってはそうは気にならない。それよりも、優先すべき事が出来たのだから。









相棒として作られた二本の騎士刀を振るい、生きるために戦い、生きるために殺す。殺される前に殺す。

とても簡単で、とても単純で、とても分かりやすい答えだった。

人を殺して心が痛まなかったって訳ではなかった。

だが、とにかく生きたかった。

この残酷な世界で、生きて、生きて、生き延びたかった。

米粒一粒、燃料一滴の為に毎日が戦争だった。八歳の子供に短剣を突きつけられたこともあった。

最も、その子供に少しばかり食料を分けたら、お礼を言って去っていったのだが。








論の命を脅かす外敵という外敵は出来るだけ退けてきた。

話を聞いてくれない相手は、全て斬り払った。

楽な戦いなど存在せず、中には、論が知らないような能力を持つ相手も数多く居た。

しかし、戦場で対峙した以上、そこにあるのは勝利と敗北、そして生か死。

覚悟を背負い戦い、何らかの形で絶対に訪れる結末。

誰が生きるか、誰が死ぬか。

死ぬのが嫌だから、生きたいから、お互いに刃を向けて戦う。

戦闘の本質などそんなものだ。






―――それを一くくりでまとめるなら『正義』だと、誰かが言っていた。






…その言葉を考えるだけで、吐き気がする。

…『正義』という言葉ほど、都合のいい言葉はない。

寧ろ、逃げ口上としてはこれ以上ないほどの便利な言葉。

この世に生きる全ての生き物の数だけ存在するそれは、人の見方や性格によってころころと形や立場を変える。

一人の正義など、他者から見れば『悪』になる。

そいつの正義はそいつだけのもの。他人にとっては忌むべき悪。

いや、全ての『正義』たる定義が、きっとそうなのだろう。

生物が生まれた時から今まで、延々と繰り返された構図。

だから、今更そんな事を考えても仕方がない。

その時は、そう思っていた。

そして、これからずっと一人で戦い続けていくのかもしれないと、その時の論はそう思っていた。





―――そんな論の運命を変える時が来たのは、ほんの数ヶ月前だった。

ある日、『天樹錬』の存在を、名前を知った。

自分と全くそっくりな『悪魔使い』の少年の情報を得た。

様々なルートにより、天樹錬の経歴を調べてみた時、ある事実に気がついた。

『家族』と一緒に過ごしている、一人ぼっちではない少年。

『家族』――――論に無くて、錬にあるものがまさにそれだった。

何が違うのか、と、論は真っ先に思った。

オリジナルとクローンでは、どう違うのか。

どうしてオレは、一人ぼっちで過ごさなくてはならないのか。と。





その日、論は、天樹錬に嫉妬した。

そして嫉妬は、憎しみへと昇華する。

天樹錬の殺害を決意するには、それほどの時間は要らなかった。





―――天樹錬を探しあてる為の旅の中、論の運命を変える一つの出会いが訪れる。

戦場で出会った、エメラルドグリーンの髪の少女――ヒナ。

心の中に感じたのは、今の今まで感じた事の無かった感情。

心臓がどくどくと高鳴り、頬が赤くなり、食欲が無くなって、心がちくちくするという、そんな感情。

…それが恋だと、その時になって初めて知った。









エメラルドグリーンの髪の少女――ヒナが何も言わずに論の下を去った後で、紆余曲折あって錬を探し当て、フィアを人質に取り、錬と戦った。

その中で、錬を殺しても何にもならないと、気づいた。

しかし論は、憎しみに囚われ、錬を、そしてフィアを傷つけた。

こんな自分に、錬と一緒に過ごせる権利なんてない。

だから、論は錬達の下から去ったのだった。







そして、流転の時は次々と訪れる。

ジティ・メルボルンで共同戦線を張ったレシュレイ・セリシアの二人。

錬との戦いで錬達に味方していたが為に一戦を交えたが、最後には和解できたブリード・ミリルの二人。

そして、エメラルドグリーンの少女―――ヒナと再開し、『もう一つの賢人会議』との決着をつけるべく、それぞれが戦うべき相手と戦った。








ヒナに対し残酷な仕打ちをしてきた一人の少女―――シュベールと、論は戦った。

激戦の末に彼女との戦いに決着がついた時、初めて全てを知った。

その時は、今の今まで感じた事のない感情に教われた。







―――あれ以来、ヒナはシュベールの件については何も言及してこなかった。

『姉』を殺した自分を責めてくれてもいいのに、責められても当然なのに。と論は思っていた。

だから、一度、勇気を出してその事をヒナに告げた。

だが、その結果として、

「そんな事をしたって、シュベールは喜びません…。
 それに、わたしだってシュベールの事、なんにも知らなかったんです。
 そんなわたしが、論だけを責める事が出来る権利なんて、どうすれば持つことができるの!?」


…と、泣きながら言われた。

それは在る意味では当然の答えだった。

ヒナとて、真実を知るまではシュベールの事を憎んでいたのだから。

ただ、ヒナがシュベールを憎むような仕打ちをしていたのは、他ならぬシュベールだった。

…そう、あの時、確かに彼女はこう言っていた。






――――あたしは全力で振舞った――――

――――どれだけ憎まれてもいい。恨まれたって、構わない――――

―――ヒナに酷くあたれば、あたしが死んでもヒナが悲しまずに済むって、ただそれだけを思ったから―――












己の命が残り少ないと知り、嫌われてもいいから一人の少女を救いたかったという、一人の少女のたった一つの願い。

シュベールはヒナを想うが故にヒナを傷つけ、痛めつける事で、逆にヒナを守ろうとしていた。

愛するものを自らの手で傷つけ、それでも守りたい一心で、鞭を振るっていた。

憎悪にも匹敵する、巨大で深い愛情の奔流がそこにあった。










―――――あたしはね、論。貴方の大切な人になりたかったの―――――

―――――論の隣に居たかったの―――――

―――――論の為に生きたかったの―――――




―――――あの時、あたしを助けてくれた論と一緒に生きたかったの―――――











論への彼女の愛情は、それこそ“殺意”に勝るとも劣らないものだった。

強く激しく狂おしく求める、少女の剥き出しの願望。

何を犠牲にしても惜しくないという覚悟の上でのもの。

なぜ、もっと早くシュベールの思いに気づくことができなかったのか。

そう思うと、胸が張り裂けそうになる。




その日、胸の中で泣き続ける少女を強く抱きしめながら、論は誓った。

論が止めを刺していないとシュベールは言ったが、それで納得する論ではなかった。例えどう言いつくろうと、論が止めを刺した事実は変わらない。

だから、その事実からは逃げない。

絶対に、逃げるわけにはいかない。

誰よりもヒナの事を想っていた、自らの運命に翻弄された哀れな少女。

シュベールという名の少女にせめて償うために、彼女の最後の一言を胸に刻み、あの日、論は叫んだ。

「…泣かせるなって言われた矢先にヒナを泣かせたけど…お前を想ってくれての涙だから許してほしい…。
 だから、これからはその約束を守りきってみせる。そして、オレはこの大切な女の子を守る為に、これから生きていこうと思う。
 …それがきっと、オレの生まれた訳なのだから!!」
















―――それは絶対に破らないと誓った、約束。

















…だが、今でも時折思い出して、そして後悔する。

―――二人とも助けることは、どうあがいても出来なかったのか、と。

思い返しても、過ぎ去った過去が変えられるわけ無いと、十分に分かっている。

だけど、どうしても出来なかった事だからこそ、後悔として、論の心の中に強く残っている。

この問題に対する決着は、一生つかないかもしれない。

そんな思いが、論の心の中に確かにあった。










【 + + + + + + 】










―――そこで、回想が終わった。

「ぐ…」

ずきり、と心が痛んだ。

歯を食いしばり、胸に手を置く。

痛みはすぐに治まってきたが、それでも。心に湧き出たもやもやは消えなかった。

ふと、視線を逸らす。

黒い瞳に映る窓の外、この家の小さな庭に新しく出来た小さなお墓に、シュベールは眠っている。

論が犯してしまった罪を償う為に、その罪を絶対に忘れない為に、敢えてよく見える位置を選んだ。

だが、ヒナが言うには『シュベールには、もっとふさわしい場所があります』との事らしい。

おそらくそれは、シュベールの『本当の妹』が死んだあの地。

論が初めてシュベールと出会った、運命の分岐点。 

「…そうだな」

誰にともなく、論は呟いた。

「…大好きだった『妹』の傍で眠らせてあげるのが、一番なんだよな…」

いつか機会があったら向かおう、と付け足した。










「…ん、もうこんな時間か」

脳内時計が『午前十時二分』を告げていた。

そろそろ、データライブラリへ行く時間だと言う事を思い出す。

今なら丁度開館したばかりだろう。ならば時間はある。

といっても、お昼には帰ってこないといけないという制約がついているのだが。

週に数日、シティ・メルボルンの診療所の手伝いに行っているのだが、今日はそれが休みだ。










尚、初めてデータライブラリ行くときにヒナも誘ってみた。

嫌な顔一つせずに、彼女はついてきてくれた。

その結果、ヒナはデータベースよりも本のほうに興味がわいたようで、様々な物語が記された本を片っ端から手にとって、すさまじい集中力で読むことに集中する。

そして読み終えれば次の本へと手をかけるのだが、そこでちょいと面倒が起こる。

別にヒナが何を見ようと自由だし、論が口出しする理由も無いのだが、なんの因果かヒナが興味を持った本は本棚の上の方にあるのだ。

で、ヒナの身長は152cm…台に乗ったとしてもギリギリで手が届かない。

台の上でジャンプする訳にもいかないし、『天使』の翼で飛ぶなんて論外だ。一般人には『天使』の翼など見えないわけだから、少女の体が宙に浮いているという光景を見ただけで大騒動になってしまう可能性も十二分に有り得る。

そのつど『うぅ〜』と言いながら泣きそうな視線を論に向けてくるので、結局、台に乗った論が本をとってあげるという事態になるのだ。

とはいえ、論の身長は164cm…台に乗って手を伸ばしてぎりぎり届くかどうかなのである。お陰で、一冊の本を手に取ったら連鎖式に本が降ってきたという事態も二回ほど招いてしまっているのだ。

別に論よりも身長の高いのはいくらでもいるから他に頼めばいいんじゃないかと一度言ってみたのだが、そうしたら『論に取ってもらいたいんです』という返答が返ってきたので、反論が出来なかったのだ。

百戦錬磨の論といえども、どうにもヒナに対してだけは甘くなってしまうようだ。その証拠に、ヒナに物事を頼み込まれると、論自身も気づかぬうちに口の端が緩んでしまうらしい。

もしかしたらこれが天樹の血筋なのかと、ほんの一瞬だけどうでもいい事を考えたりもした。事実、天樹の長女である月夜とやらも錬には甘い、という話と、論のオリジナルである『天樹錬』もまた、フィアには甘々だという話を聞いた事もあったのだから。

そこまで考えて、ヒナが皿洗いの後にいそいそと部屋に戻っていったのを思い出した。

きっとヒナは、今頃いそいそと準備をしている頃だろう。

「…オレも、準備するか」

ベッドから起き上がり、部屋の隅においてあるバッグを手に取った。

『菊一文字』『雨の群雲』の二本の騎士刀は壁に立てかけてある。

流石にこんな物騒なものを持って街中を歩くわけにはいかない。ただでさえ『賢人会議』の襲撃で街は混乱に陥っているのだから、それに油をそそぐような真似は慎むべきだろう。辻斬りの類でもあるまいし







そもそもの始まりは『もう一つの賢人会議』との戦いが終わって当面の問題と言うべきものを解決したところ、論の心の中に『今まで知る事の出来なかった事』に対する興味が沸いてきた為だった。

知的好奇心、と言ってしまえばそうなのだろう。

実際、論の外見の年頃なら、どんな知識でも吸収できるし、また、知識を望みたがるのもごく当たり前の事だった。

そんなわけで、とりあえずはデータライブラリまで行って調べ物をしてこようと思った。

…で、今に至るわけである。





―――ちなみに、過去に一度だけ、輸送物搬送ルートからシティ・マザテューセッツへと潜入し、データライブラリを調べた事があった。

その時は正に死と隣り合わせだったといっても過言ではない。

周りは全て敵だらけで、論の味方など一人も居るわけがなかった。まさに常時戦場である。

また、正門から行くことは出来ない。シティ・マサチューセッツの税関には魔法士用のデバイスが設置されている為だ。

故に、輸送物搬送ルートなどという面倒なルートを通る羽目になったのである。

シティ・メルボルンのデータライブラリはシティ・マザチューセッツのデータライブラリに比べるとやや小規模だが、面倒な輸送物搬送ルートや偽造IDを使わなくてもいい分、気が楽になる。









「…そして今は、とても平和だな」

部屋を見渡し、論は、誰にともなくつぶやいた。

実際、この一週間は戦闘に縁のない生活だったと論は思う。

寧ろ、今までの戦闘ばかりの生活が異常だったのでは?とすら思えてくる。

戦いばかりに明け暮れた、普通の人間なら縁のない人生。

魔法士であったが故に、避けられなかった戦い。

寝込みを襲われることなど当たり前。油断が即、死へとつながる、油断など到底出来ない人生だった。

我ながらよくもまあ精神が崩壊しなかったなと思う。

あの頃は、思い返せば思い返すほど、戦いの記憶しか出てこなかったから。









―――だが、これからは違う。

これからは、あの子の為に生きていたいと強く決めた。

己と戦っていた一人の少女がこの世に残した、世界でたった一人の、論の大切な恋人―――ヒナの為に。

論を想ってくれていたあの少女と交わした約束を、違える訳にはいかないから。

「論―、準備出来ましたよ―」

その時、コンコン、というノックの後、扉の向こうから声が聞こえた。

「分かった、今行く」

バッグを持ったまま扉へと向かい、ドアノブに手をかけて扉を開けようとして後ろを振り向いて、

「…行ってくるぞ、シュベール」

窓の外の小さなお墓を見ながら、一言、そう告げた。















【 * * * * * * * * * * * * * * * 】















街の端からまっすぐに伸びる大通りは、そのまま街の中央部に繋がっている。

大通りというのは嘘ではなく、フライヤーが三台並んで通ってもまだ余裕があるほどだ。

但し、あちこちに残った舗装タイルの割れ目から、凍った土がのぞいている。先の『賢人会議』とシティ連合の戦いが残した傷痕だ。

多くの人が苦しみ、そして死んでいっただろう。

戦争で最も被害を被るのは、何の力も持たない一般人だ。

それを知っていて、人々はどうして戦うのか…これは、人が人である限り永遠に決着のつかない問題なのだろう。









頬に当たる風はちょうどよいそよ風。マザーコアによって『人が住める環境』に整備されているシティ・メルボルンならではの風だ。

時折空を見上げると、偽者の青空がそこにある。

こればかりは、どこのシティでも変わらない同じような景色だ。

そして、このシティ・メルボルンがマザーコアによって運営されているという事実を、多くの人々は知らない。

その大通りの端っこを、手を繋いだ論とヒナは、談笑を交わしながら歩いてゆく。

二人の服は、周りにいる住民達とそれほど代わらぬ服。

論は長袖のシャツとジーンズ。ヒナはカーディガンにスカートの組み合わせだ。今、あの戦闘服を着る気には到底なれなかった。

「…ところで、今日は、レシュレイさんとセリシアさんが買い物に行っているんですよね。今日のお昼は何になるのでしょうか?」

「セリシアが『うどんがいい』ってリクエストしていたからな…まあ、大方冗談だと思うが」

「本当にうどんだったらどうします?」

「…んー、そうだな…」

少しの間、論は考えて、

「どうせなら野菜たっぷりで頼むと言っておこう」

健康面の事を考えて、その回答を導き出した。

その回答に、んー、とヒナは考える仕草をして、

「五目うどんですか。たまにはいいかもしれませんね」

賛同の意を示す言葉を笑顔で告げた。

「…だけど、そうそう簡単に野菜が手に入ってくれるのですか?」

と思ったら、今度は疑問を顔いっぱいに広げて聞き返してくるヒナ。

「…入らないだろうな。多分」

論は素直に答えるしかなかった。

この世界において、本当の野菜はとても貴重なものだ。

今流通されているものは、その殆どが遺伝子組み換えと合成から作り出されたもの。

味は本家とそう変わらないが、なんというか、風味の点で劣るのだ。

「しかし、生きるためにはそんな贅沢は言ってられないのが現実なんだよな」

「むー、もっともですね」

そこで、会話が途切れた。

三秒の間、気まずい空気が流れる。

…よく考えてみれば、これは仕方のないことだった。

論もヒナも、今までひとりぼっちの時間が長かった。その為、いざこういう仲になると、どういう話を切り出していいかわからないのである。

レシュレイとセリシアみたいに『恋人同士の会話』が中々出来ないのだ。

今までは『生きてきてから何があったか』や『実体験した面白い話』などが会話の中で交わされてきたが、それも話の種が尽きつつある。

何とかして会話を切り出そうとして、そこから四秒の時間をかけて論が口を開いた。

「…なんか、二人して歩いているのに、こういう話題しか出てこないってのは悲しいな」

…しかしそれは、今の状況を如実に表したものでしかなかった。恋人同士が行う会話としては、どう考えても当てはまらない。

「で、でも、どんな話があるんですか?」

「…それを言われると困るが…そうだな」

いざ言い出してから考え出す羽目になった。

データライブラリについたらそういう知識も仕入れようと思って、考えながら顔を上げると、

「あ…いつの間にか着いたな」

「…本当ですね」

目の前には、巨大な建物。目的地のデータライブラリだ。

「ま、まずは入ろうか…この前、本の続きを読みたいのがあったんだろ」

「はい。
 あ、も、もし高すぎて取れないところにあったら、またお願いしますね」

「分かってるって」

かすかに赤みを含んだ頬でお願いをされて、論は笑顔で答えた。

最後にやっと、ぎこちない形ではあるが『恋人らしい会話』が成立し、二人は笑顔でデータライブラリの扉をくぐった。













エレベータで七階まで上り、あちこちに置いてある案内板の通りに進み、たくさんのコンピュータや本ががずらずらっと並ぶデータライブラリの一室まで到着した。

置いてある机は軽く二十を超え、本棚には隙間なく本が詰め込まれている。

データ用端末としての役割を示すコンピュータの数は、軽く四十を超えているだろう。

このデータライブラリは『賢人会議』と二つのシティの連合軍との戦いの中にあっても尚、奇跡的に無事だったらしい。

見渡すと、黒髪の中年男、青い髪の男、赤い髪の少女など、老若男女さまざまな人がデータライブラリを利用していた。

今ここに居る人々の興味は、間違いなく先日の襲撃事件に、そして『賢人会議』についての一点張りとなっていることだろう。

当然だ。あれほどの事件を引き起こした『賢人会議』という組織について、街の人達は知らなすぎたのだから。

これから起こりうる更なる事態に備えてという意味でも、どうして自分達がこんな目に遭わなくてはならなかったのかという不信感からも、『賢人会議』調べたいと思うのはとても自然な事だった。

だが、すぐにそれは無意味だと知る。

軍が情報に規制をかけているため、このデータライブラリでは「あちこちで悪事を働く正体不明のテロ集団」以上の情報は出てこないのである。

この事に納得しない人びとはカウンターの若い受付嬢に束になって抗議しており、一度にたくさんの人に詰め寄られた若い受付嬢はおろおろとして応対に困っている。

加えて、抗議へと向かう人々の数は現在進行形で増える一方だ。

論とヒナはデータライブラリのかなり奥の方に移動したのだが、入り口のカウンター付近の人々の罵声と抗議の声はそこに居ても聞こえてくる。

「…酷いな」

その様子を遠くから見やり、論は呟く。

「焦りと不安が人々を突き動かして、こんな事態を起こす。これでは、まるで戦争だな」

その時、ぽんぽん、と軽く肩を叩かれる。

「…論、突然ですけど…」

服の袖を引っ張り、論の耳元、小さな声でヒナが口を開く。

「ん?どうしたんだ?」

耳元に訪れる妙にくすぐったい感覚に頬が緩みながらも、なんとか悟られないようにして普段の調子で言葉を紡ぐ。

「もし知っていたら、教えて欲しいんです」

「内容によるけど、何をだ?」

その論の返答に対し、ヒナは少し間を置いてから、

「…『賢人会議』は、何が目的なの?
 シティの皆さんをこんな恐怖に陥れる事で、何かメリットでもあるの?」

その質問を聞いて、論の心の中に焦燥が浮かんだ。

今までヒナがしてこなかった質問が、今、問われた。

だが、論は『どうしてそんな質問をするんだ』などといった類の反論の言葉を浴びせる事が出来なかった。

ヒナのその瞳には、うるうると涙が溜まっていたからだ。

涙の理由は直ぐにわかった。

彼女もまた、不安なのだ。

やっと手に入れた平穏な暮らしが壊れてしまうのが、とっても怖いのだ。

今までが戦いの日々だったからこそ、ヒナは何よりも安らぎを求めている。

…だから、この瞬間に論は思った。

―――自分が知っている事でいいから『賢人会議』について話をしておこうと。

例えそれがヒナに余計な不安を抱かせてしまったとしても、知らないよりはずっとマシだろうと思ったから。

それに、これはいつか話さなければいけない状況がくるかもしれないと、心の底ではずっと思っていたことだから。

「…その件だが、ちょっと場所を変えよう。ついて来てくれ」

「え?」

カウンターに詰め寄る人々達の脇をくぐって外へと出て、近くにある休憩所へと場所を移した。

休憩所はホールのように丸い形状をしていて、中央にテーブルがある。

先客は、頭の毛がすっかり白く染まってしまった爺さんが一人、うつらうつらと眠りこけている。

「ここならいいだろう。
 今のデータライブラリは『賢人会議』の事で詰め寄っている人でいっぱいだし、他にもう一つ、ここより大きめの休憩所があるから、避難しようと思った人はまずそっちに行く筈だ。
 だから、こっちにまで避難してくる人は滅多にいない筈なんだ」

ここ数日で、このデータライブラリ周辺の地形を覚えた論が説明する。

論の言う通り、シティ・メルボルンのデータライブラリの休憩所は二つある。

今、論達が居るのは、人が滅多に来ない小さい方の休憩所だ。

時折、データライブラリの利用者が多い事により大きめの休憩所が埋まってしまう事があったため、同時期に丁度閉店した小さな飲食店のスペースを借りてここが作られたらしい。

ここに人が来るとなれば、人が来ない事を利用して昼寝をしにくる場合や、他人が居ては話せないような秘密話を行うことくらいだ。

目の前で寝ている爺さんが前者で、論とヒナが後者にあたるだろう。

二人は爺さんから離れたところに隣り合わせに座る。

振り向き、お互いに向かい合う姿勢になった。

「…ここまで来たのはいいんですけど、これからどうするんですか?」

「それなんだけど…」

一瞬、間を置いて、

「―――今から『同調』しようと思う」

答えを告げた。

「『同調』する…?」

論の真意が分からず、ヒナの頭に疑問符が浮かぶ。

「この事が、公には出来ない事だからだ…。
 もし誰かの耳に入れば、厄介なことになるのは間違いないんだ。
 お願いだ。大人しく『同調』の準備をしてくれ」

論のまっすぐな瞳に真摯な思いを感じ取ったヒナは、

「…分かりました。論がそこまで言うのでしたら」

はっきりと、笑顔で答えてくれた。










両手を胸の前で合わせて、目を瞑ってI−ブレインに命令を送る。

(『蒼穹の翼トワイライトブルーウィング)』起動)

数ナノセカントの時間を得て、ヒナの背中に水色の翼が具現化する。

御伽噺に出てくる天使をモチーフとしたようなその翼は、守るように論の身体を包みこむ。

『情報』から作られた天使の『翼』は、魔法士で無くては視認する事が出来ない。

だから、ここでヒナが翼を広げても、一般陣には『少女が目を瞑って考え事をしている』という風に見えるだろう。

そして、ヒナの背中に、水色の天使の翼が具現化したのを確認した後、論も目を瞑る。

(天使逆転支配サタンハングドエンジェル)』起動。
 外部からのアクセスを確認―――『承認』コードを受容。
 外部防壁解除。『天使』との『同調』を許可)


I−ブレインのファイアウォールの解除ポートの解放を完了する。

本来『天使逆転支配サタン』は、相手の同調能力に介入して、その制御権を奪うのが目的だが、寧ろ、相手に制御権を奪われないようにするために使う能力だ。

また、『天使』と心の中だけで会話をする事も可能。

で、この場合は、特に制約もかけずに『天使』との会話にI−ブレインの容量を割けばいいだけのこと。

『…ど、どうですか?ちゃんと『同調』出来てますか?』

ちょっとだけ不安の混じった声で、ヒナが問いかけてきた。

思えば、『同調』するのは、かつてヒナと戦ったとき以来なので、不安要素があっても仕方の無い事だろう。

だけど、その不安は杞憂だったようだ。

その旨を示すために、論ははっきりと告げる。

『…大丈夫、リンク確立に成功した。

 じゃあ、今から話すから、よく聞いてくれ』

『は、はい』

I−ブレインを通しての、精神世界だけの会話。

ヒナからの返答が返って来た事を確認した論は、いきなり核心に迫る事実を切り出した。










『―――最初に結論から言わせてもらうけど…。
 オレが知っている限り『賢人会議』っていうのは、マザーコアにされる魔法士達を助ける為に動いている組織らしい』









『…え?
 い、今なんて!?』

論の答えが余程信じがたいものだったのか、ヒナはおそるおそる聞き返した。

『…信じたくないだろうけど、敢えてもう一度言おう。
 ―――オレが知っている限り『賢人会議』っていうのは、マザーコアにされる魔法士達を助ける為に動いている組織だって事だ』

『や、やっぱり聞き間違いじゃなかったんですね…で、でも、それはどういう事なんですか?』

思わぬ答えに、一瞬、ヒナは唖然としてしまう。

おそらく、世界的に有名となったテロ組織の行動が、一般的なテロリストの行う国家転覆などではなかった事が意外だったのだろう。

『…まあ、いきなりこんな話されても信じがたいよな』

知らず、論の口元が和らぐ。

『だけど、これは事実だ。
 オレは過去に一度だけ、シティ・マサチューセッツのデータライブラリを使って軍のデータベースにハッキングして『賢人会議』が襲撃した場所を調べてみた事がある。
 あの頃は今ほど『賢人会議』は脅威として扱われていなかったから、今よりはプロテクトも厚くはなかった。
 だから、比較的簡単に進入することが出来た。
 …で、調べてみた結果、面白い答えが出て来たというわけだ』

『そ、それはなんなのですか?』

現実世界の体が動き、ずい、と身を乗り出すヒナ。

知りたい、と思った気持ちが、自然とそうさせていたのだろう。

そこを「落ち着けって」と論に諭され、「あ」と声を出したヒナは元の姿勢に戻る。

こほん、と咳払いを一つしてから、論は説明を続けた。ただしIーブレイン同士で。

『まず言っておく事として、『賢人会議』という組織を構成している人間の数はオレにも分からない。
 一人かもしれないし、大軍団を率いた軍団の可能性もある。
 実際『賢人会議』に対するオレの知識は結構穴があるんだ。だから、確定していると思う事意外は言わないようにしている。
 しかし、そんな中、自信を持って言える一つだけ確かな事があるんだ。
 ―――襲われたのはいずれも『マザーコアを管理している場所』だという事だった、って事だ』

『マザーコアの…管理?』

マザーコア、と聞いて、ヒナの背筋に僅かな寒気が走った。

『ああ、ヒナもこの世界が、このシティが何で動いているかは知っているだろ』

『はい…マザーコアという、魔法士の脳を利用した永久機関です。
 わたしも、シュベールがいなかったら、マザーコアにされていたのかもしれませんから…』

ヒナの顔が、たちまちのうちに泣きそうに歪む。

シュベールの名前を出すのは辛かったが、それは本当の事だ。

シュベールという一人の少女が居たからこそ、ヒナは今を生きていられるのだ。

そして、そのシュベールという少女は、もうこの世にいない。

論を試す為の戦いで論との戦いに破れ、その時になって全ての真実を話して、死んでいったのだから。

『そうだ…そして、オレは今でもシュベールに感謝している。
 …だけど、今は『賢人会議』について話している訳だから、申し訳ないけど、シュベールの話は一旦おいておいてくれ…辛いなら、後でいくらでも話を聞いてあげるから』

『…あ、は、はい』

ヒナは口ではそう答えたが、それでも暗い顔をしている。

分かっている。

シュベールの事を語るとなると、辛い記憶が多すぎる為に、どうしてもヒナが暗い顔になってしまう。

それはどうしようもない事で、仕方の無い事。

だが、ここで厳しい事を言わせて貰うと、それを気にしていてはいつまで経っても話が進まない。

だから、論は『賢人会議』についての話を続ける事にした。

―――無論、論とてシュベールの事を忘れた日は一日たりとも無い。

だが、今は目の前の問題について話さなくてはならない時だと分かっているからこそ、シュベールの事は一旦おいておく事にしたのだ。

この問題は、論やヒナにとっても、決して他人事では済まされないのだから。

(すまない、シュベール…だけど、今は許してくれ…お前が守りたかった『妹』の為にも…)

シュベールに心の中で謝った後に、論は話を続けた。

『…話を続けるぞ。
 『賢人会議』は、マザーコアにされる魔法士を強奪する為に、何千人、何万人もの人間を殺した事もあったらしい』

ヒナの喉から「ひう」という声。

『殺した』という単語にも、ヒナは敏感に反応する。

それは、『もう一つの賢人会議』に所属していた頃に、生きるためとはいえ幾人もの人を殺し続けた、ヒナ自身の罪の意識がさせたものだろう。

論がヒナと初めて出会った時の、血に染まった服がそれを表していた。

―――だが、今は違う。

これ以上、ヒナに人を殺させたくなんて無い。

だから、気がつけば次の言葉を口にしていた。

『ヒナ…あれは、あれはもうすぎてしまった事なんだから、もう気にする必要は』

『分かってます!!』

論の言葉を遮り、強く、ヒナは叫んだ。

その勢いに、論は一瞬気おされてしまう。

「あ」とヒナが口をあけて、その後はしおれたようにしゅんとなってしまった。

『ご…ごめんなさい…叫んじゃって』

つい感情的になってしまった事を、反省するヒナ。

『ヒナ…』

『わたしは…大丈夫です。だから、続きをどうぞ』

『ッ!!』

嘘だ。と思った。

口調こそ穏やかだが、言葉にまったく合っていないヒナの辛そうな顔を見て、ヒナの真意が一目で分かった。

何人もの人を殺しておいて、辛くない訳が無い。

だけど、論の話を中断させまいと思って、論に余計な心配をかけさせまいとして、ヒナはこういう行動に出たのだ。

それが痛いほど分かった論は、後でヒナの話を聞いてあげようと心の中で決意して、『賢人会議』に対する話の続きをする。

『…じゃあ、続けるぞ。
 ――だから、オレは思ったんだ。
 『賢人会議』は、マザーコア用の魔法士を強奪したんじゃなくて、助ける為に行動を起こしたんじゃないかって』

『助ける…ため?』

『ああ、実際に考えてみて、この説が一番可能性としては高いんじゃないかと思う。
 マザーコアにされるっていうのは、自由も何もかも奪われて、シティを動かす為の人形にされるってことだ。
 それでは、魔法士に対する人権が無いのも同じだろう。
 人間達は確かに魔法士を作った。だけど、だからって魔法士達を自分の好き勝手にあつかっていいのかっていう疑問がある―――つまりは、そういう事なんだろうと思う』

『そう…ですよね。 魔法士だって生きているんだから、生きていたいって思います。
 えーと、つまり『賢人会議』が、今までわたしが思っていたようなだたの悪い人達じゃなかったと、そういう事なんですね』

『ヒナ…今まで『賢人会議』をどんな奴らだと思っていたんだ?』

『…えと、えと、それは…と、とっても怖い人がリーダーをやってる組織』

そのビジョンを想像してしまったのか、ヒナは小さく震えながら正直に告げる。

答えを聞いて、思わず論は苦笑してしまった。

『まあ、確かにテロリストとか聞いたら普通はそう思うよな…』

『今までの歴史を見てみても、テロリストというのは、みんな碌なことやってないです…二十世紀のビンラディンとかいう人間がリーダーの組織なんかがそうでした』

『正史が示したテロリストのイメージ…という奴か。
 まあ、それは置いておいてだ。
 …だが、とある点について考えてみると、『賢人会議』のやっている事は、国家転覆よりも酷い事になると分かった』

『え!?どうして…まさか、そういうことですか?』

発言の途中で論の言おうとしている事が分かり、ヒナの顔が青ざめていく。

『その様子だと、分かったみたいだな。
 そう、マザーコアを撤廃するという事は、シティの人間達に死ねって言っているようなものだからな』

『マザーコア無しじゃシティの人間は一日だって生きていられないって、そう聞きました』

『その通り。
 だからこそ、シティと『賢人会議』の戦いが続いているんだ。
 結局のところ、シティと『賢人会議』の考えは平行線。絶対に交える事は無いんだということ。
 オレが分かるのはここまでだ』

『…はい、よく分かりました』

笑顔でお礼を言うヒナ。だが、その顔に影がかかっていることは、誰の目から見ても明らかだった。

『…ありがとう』

だから、論も笑顔で返す。ヒナの顔の影の事には触れないようにして。

『…あと、これがオレが『同調能力』で話そうって言った理由だけど…どうしてオレがそうしたのか、今ならわかったか?』

『はい、十分に分かりました。
 こんな事、『同調能力』でも使わないと言えないですね。
 確かに、あの混乱に陥った中でこんな事話したら、皆さんがますます混乱してしまいます…論はそこまで考えて、こういう手段をとったのですね。やっぱり論は凄いです。それでこそ、わたしが好きな論なんです』

『…いや、そこまで褒められてもな…』

『好き』という単語に反応した心拍数がどくどくと上昇し、論の頬が赤く染まる。

『あ、あと、ちょっと、い、言いたい事があるんだ』

五秒の沈黙の後に、論は口を開いた。

だが、先ほどの件のせいで、少々どもってしまう。

それでも何とか顔つきだけは真面目にして、告げることにした。









『ヒナ…話は変わるけど、もう一つ問題がある』

『…問題?なんでしょうか?』

論は言いづらそうにしていたが、それでも、告げねばいけないと心に決めて、思い切って口に出した。

『…今から話す事は―――これからのヒナ自身の事について、だ』

『え!?ど、どうしてわたしの名前が出てくるんですか!?』

いきなり自分の名前を出されて、ヒナは困惑する。

だが、それに構わずに論は続けた――この後、この話を聞いたヒナがどうなるのかを分かっていながらも。

『話が重くなるが…『天使』はマザーコア適正がとても高いらしい。マザーコアを動かすのには最適の魔法士だそうだ。
 それでいて、ヒナもまた、その『天使』だって事だから…』

『―――まさか…ううん、違うよね。違いますよね』

ヒナの顔が、たちまちのうちに蒼白になる。

だが、論は覚悟を貫いて、言葉を続けた。

『『賢人会議』の所業のせいで、ただでさえ不足しているマザーコア用の魔法士がさらなる不足に陥っているらしい。
 もしヒナが天使だってばれたら、軍が血眼になってでも捕らえに来る。
 天樹錬の傍にいたフィアだってそうだ。
 軍の人間は、シティ・神戸の事件の時に姿を消した彼女を追っている。もしフィアが捕らえられれば、軍の奴らはすぐにでもマザーコアとの接続を開始するだろう。
 ヒナだって、天使だとばれたらそうなってしまうんだぞ』

『…や、やだ…やだよ論。そんな…そんな事言わないで…』

小さく肩を震わせて、怯えるヒナ。

その反応は、論が想定していたもの。

…きっと、こうなると思っていた。

この事を話せば、こういう反応が返ってくるとわかっていた。

だけど、話さないわけにはいかなかった。これは、この先、いつ出会ってもおかしくない事なのだから。来る未来に備えて、知っていてもらわなくてはならないのだから。

(…やっぱりこうなってしまったか…だけど、これで言っておきたいことは告げた。
 後は…慰めてあげないとな…オレが蒔いた種でもあるんだしな)

これ以上ヒナを怖がらせてはいけないと思った論は、優しい口調で言葉を選んで告げる。









『だけど安心してくれ。ヒナ。
 オレはたとえ世界を敵に回してでも、ヒナをマザーコアになんて絶対にさせない。
 世界がなんて言おうとも、ヒナは軍には渡さない。
 それが、オレが今、ここに居る理由だから…』










『…うん、ありがとう、論』

論の言葉を聞いたヒナの瞳の端から、一滴の涙がこぼれた。

本当に天使のような微笑を浮かべた少女の姿が、そこにあった。

(嬉しいです…だから、大好きです)

『同調能力』を介して、ヒナの心の声がここまで伝わってきた。

(…そういえば、こんな欠点もあったんだったな)

『同調能力』には、口に出さずに会話を行えるという利点がある反面、感情を抑えられなくなると心の声が聞こえてしまうという欠点もあったのだった。

今のはどちらかというと嬉しいことなのだが、どうにもこうにも、心越しとはいえそうやってダイレクトに大好きと言われるのはやっぱり照れくさい。

『…じゃあ、そろそろ『同調能力』を解除するぞ』

ごほん、と咳払いする論。

『はい』

どうやらヒナは、心の声が論に届いた事に気づいていないのかもしれない。

(…でも、まあいいか)







(『同調能力』解除)

その直後、I−ブレインから放たれたその言葉を受け入れた後に、

(『天使逆転支配サタン』リンクを解除)

論のI−ブレインがその一言を告げる、

意識が現実に引き戻され、二人は目を開けた。












【 + + + + + 】











目を開けてからまず第一に、周囲を見渡した。

『同調能力』中にこちらに近づいた気配は何も無かったが、それでも見渡さずにはいられなかった。

二人とも目を瞑って向き合っていたわけなのだから、流石にそんなところを見知らぬ他人に見られるのは恥ずかしい。

だが、周りに居るのは依然として眠りこけている爺さんが一人だけだった。

二人は、胸を押さえて安堵の息を吐く。

「…そろそろ、戻ろうか」

「はい、本の続きも読みたいですし」

二人は立ち上がり、データライブラリの方へと向かう。

後には、すーすーと寝息を立てて寝ている老人一人が残された。









途中、家族連れらしき少年ととすれ違った。

すれ違ってから数秒後『あー、お爺ちゃん寝てる――』という声が聞こえてきた。

その事から、たった今すれ違った方々が、休憩所でずっと寝こけていたあの爺さんの家族だったということが理解できた。










脳内時計を起動すると『午前十一時三十四分』という答えが返ってきた。

そして、昼前という時間帯であっても、データライブラリにはまだたくさんの人が居た。

先ほどと違うのは、大きい休憩所が人でいっぱいだった。ということ。

カウンターは未だに混んでおり、混乱は解除されていない。

だが、ここにはこれ以上の情報が無いと悟った為に帰ったりした人もいたのか、先ほどに比べれば人の数は少なかった。 

今ここに居る人達は、調べ物の合間の休憩時間といったところか。

もしかしたら、カウンターに詰め寄るのに疲れて、休憩を取りに来た人も混じっているのかもしれない。

「…やっぱり、こっちに人が集まっていたか…」

「あの騒動は、まだ治まっていないのですか…」

「流石に最初から居た奴は疲れて休憩を取ったみたいだな。まあ、事態が一向に改善されてないから、仕方がないのかもしれないけど」

「…もう、こんな時だから、みんなが協力しないといけないのに…」

冷静に現状を見つめているようで、心に苛立ちを覚えている論。

協力しようという姿勢を見せない人々に対し、不満を漏らすヒナ。

そして、ここに居ても埒が明かないというのもまた事実。

この人の波がいつ緩和するかなんて、今の段階では予想すら不可能である。

「―――時間も時間だし、一旦引き返したほうがいいかもしれないな」

「そうですね。このまま居てもしばらくの間は状況は変化しないと思いますし、それに…お腹すいちゃいました…。
 帰り着く頃にはレシュレイさんもセリシアさんも帰ってきていると思いますから、そろそろ行きましょう」

「ま、特に反対する理由もないし、そうするか」

そして、二人はデータライブラリを後にした。







【 + + + + + 】









―――ここに、二人が知らない事実がある。

シティ・メルボルンのデータライブラリには、シティ・マサチューセッツの検問所などとは違い、魔法士感知用の特殊なセンサーの類などは設置されていない。

それを前もって知っていたからこそ、論は『同調能力で会話しよう』という手段に出る事ができたのである。










…尚、二人が『同調』している時に、データライブラリ内部に『魔法士の反応』を察知できる可能性があるという事については、当然ながら論は考えていた。

データライブラリのセキュリティは基本的にコンピュータ任せで、魔法士を警備にあてていない。

加えて『同調能力』は、範囲を指定すればその情報が外部に漏れることはない。

そして、今のシティ・メルボルンには、三種類の魔法士が存在する。

一つは、マザーコアとして使われる魔法士。

一つは、軍に所属する魔法士。シティ・マサチューセッツにある『WBF』で問題児と認定された魔法士や、軍に所属する魔法士なんかがこれにあたる。

一つは、極秘に作られて、シティ・メルボルン内では魔法士だと扱われていない魔法士。レシュレイやセリシアあたりがこれにあたる。

だが、その他にももう一つのパターンが存在する。

それは『外部から不法侵入した魔法士』だ。

論やヒナもそれに当たるのだが、あの時はラジエルトが従兄弟だと無理やりに誤魔化してくれた為に今がある。

天樹錬と似ているという指摘を受けたが、『顔が似ているだけだ。それに、天樹錬はもっと身長が低いだろ』というめちゃくちゃな理由で乗り切った。

おそらく、その時は非常時の最中だった為に、軍の人間もたった五人に時間を割くのは非効率だと考えてパスしたのだろう。

だから、今更調べに来ることはないだろうと思っていた。











―――だが、『もしも』今のこの状態に『偶然の産物』が加わったらどうなるか。

つまり、偶然にもその日だけ、このライブラリに『同調能力』を感知できる魔法士が居たらどうなるか――である。










論は今まで、データライブラリ内部に魔法士が居ないかどうかを常にチェックしていた。

一週間以上のチェックを続けた結果、魔法士の反応は見当たらなかった。人間の反応だけしか返ってきた覚えが無い。

だから、安心していた。

だから、油断していた。








…何時如何なる場所でも、ほんのちょっとの油断がどうなるかなんて、戦いの中で分かっていた筈なのに―――。














【 + + + + + + + + 】














論とヒナがデータライブラリから出た数時間後、データライブラリの入り口から一人の人間が出てきた。

二十歳くらいの銀髪の青年は、顎に手を当てて考え込むようにして歩いていた。

その思考の理由は、たった一つの疑問にだけ向けられていた。

「…さっき感じたあの反応は『同調能力』。
 と言うことは、『天使』がこの付近に居るという事か?
 となると、断言はできないけど『フィア』である可能性があるというわけですか…」

データライブラリを振り返り、銀髪の青年は呟いた。











きっかけは、本当に唐突だった。

午前中にたまたま立ち寄ったデータライブラリの通路を歩いていて、いきなりI−ブレインからの反応があったのだ。

唐突にI−ブレインが、ほんのわずかな『情報の乱れ』を感じ取ったからだ。

どこかで、何者かが情報制御を行っている。それも、ひどく特異なやり方で。

瞳を閉じて、I−ブレインに意識を集中した。

『情報の海』を伝い、力の発信源を特定する。

……だが、かすかな力の流れをたどりきれずに、情報の乱れが現れた時と同様に唐突に掻き消えた。

心に残るわだかまりと共に、来た道を引き返したのだった。











利用者一覧を見せてもらおうとも思ったが、あの騒ぎでは利用者一覧を見ようにも見れそうにないので、結局は諦めた。

そして別件の用事を済ませて、今、データライブラリから出てきたところである。

(そうそう何度も『同調能力』の場面に遭遇できるとは思えない…だけど、またここを訪れてみる価値はあるかもしれないでしょう)

心の中でそう結論づけて、歩き出す。

見渡せば、あちこちで軍の人間が休む間もなく動いている。

先の『賢人会議』の襲撃・そして脱出劇の際に、シティ・メルボルンが受けた大きすぎるダメージだ。

半壊したシティ・メルボルンは何とか復旧を続けているようだが、それでも、完全に復旧できるのがいつになるかなんてのは分からない。

それでもたくましく生きていくのだから、人間とは不思議なものだ、と、銀髪の青年は心の内で思った。

そして、予め予約していたかのように次の問題を思考する。

(それよりも気がかりなのは『賢人会議』の動きだ。

 あれから全く音沙汰が無いってのが気になる…一体、何を始める気なんだろうか…)

考えても意味は無いと分かってはいる議題だが、それでも考えずにはいられない。

先ほどから思考に度々と出ている『賢人会議』という、このシティ・メルボルンを半壊させた組織。

人々の怨嗟と恨みと憎しみをその身に受けても尚、その目的を貫こうとするひたむきな姿勢。

そして、つい最近までシティ・メルボルンの軍属に所属していた銀髪の青年は、『賢人会議』の目的を知っている。

―――決して『正しい』とは到底思えない理論だったが、その中には共感出来るものがあった。

だが、青年はあくまでも多くの人々を命を守る『特殊な騎士』として、『賢人会議』の意見を認めるわけにはいかなかった―――。









脳内時計が『午後四時四十九分二十秒』を告げた。

そろそろ、自分の『家』へ戻っておく事にしよう。

先にも述べたが、銀髪の青年は、今は一時的に軍には所属せずに独自で行動している。

『賢人会議』の脱出事件の際に、とある事情から戦いに参戦できなかった為に少しばかりの謹慎処分を喰らったのだ。

だが、メルボルンの軍の連中は、銀髪の青年を解雇する事はほぼない。

何故なら、銀髪の青年はかなりの実績を持つ一流の『特殊な』騎士。

彼を解雇する事は、シティ・メルボルンの軍の連中にとって何一つプラスにはなりえない。

ふと、灰色の空を見上げて、ため息を一つ。

「…『賢人会議』か。せめて、間違った方向には行かないでもらいたいものだ」

ぼそりと呟き、そのまま、銀髪の青年は帰るべき場所を目指して歩いていった。









―――もちろん、この事を、論もヒナも知るよしはなかった――。















【 + + + + + 】











夕飯が終わり、論は自分の部屋に戻ってきた。

そのままベッドに腰掛けて、昼間の事を思い出す。

「不安にさせてしまったかな…」

ヒナに『賢人会議』の事を、そして、ヒナがシティに狙われる可能性の事を話した。

彼女はとても怖がっていた。

もしかしたら、論に対して憎しみすら覚えてしまったかもしれない。

まあ、あの後きちんと頭を五回くらい下げて「も、もういいですよ」と言われても謝ったから大丈夫だと思う―――きっと。

また、この事を話したという事実に対し、後悔はしていない。

世界がどうなるかなんて分からない。

もしかしたら、明日にも軍かどこかの刺客が来るかもしれない。

いつかは告げなくてはならなかった内容なら、今、告げても対して変わらないのではないのか。

その可能性を懸念しての、思い切った行動だった。






「…ふぅ」

ベッドに寝転がり、頭の下で両手を組む。

横になった体が、心地よさを覚えていた。

そして、体とは正反対に、頭には疑問が浮かんでいる。

「…あの声は一体なんだったんだろうな…未だに尻尾すら掴めないなんて…」

ふと、あの戦いの後からずっと気にかかっていたことを、気がつけば口にしていた。

シュベールとの戦いの中、自分を励ましたくれた見知らぬ誰かの声。

I−ブレインの中で、記憶しておいた声を再生する。




『―――貴方ナラ出来ル筈―――ダッテ、貴方ハ――――』




その声は、とても透き通っていた。

ヒナの声じゃないことは分かっている。

それ以前に、出会った事すら無かった筈だ。

だけど、なんだろう―――とても、懐かしい感じのする声だった。









空を見つめると、作り物の夜空には星が輝いていた。

偽りの星だと分かっていても、それでも綺麗だと思ってしまう。

思考でぐるぐるする頭を休ませるべく頭を振って考えを打ち消し、

『雲』『シティ』『賢人会議』『謎の声』…どうなっていくのかな、世界は」

誰にともなく呟いた。

考えることが多すぎて、少々疲れる。

いつか、一つくらいは解決する時が来てくれるのか?

それとも、一つも解決できずに終わるのか?

「分かりきっていたことだけど、世界というものは酷く残酷で、難儀なものなんだな…」

―――夜空を見上げながら、論は軽くため息を吐いた。
















<To Be Contied………>















―【 お ま け の キ ャ ラ ト ー ク 】―










ノーテュエル
「以上、今回は論のお話でした――。
 彼もまた、天樹さんちの錬君とは違う方向で色々と悩んでいる模様ですね―――ゼイネストさん」

ゼイネスト
「お前はいつから実況中継の人に転職したんだ」

ノーテュエル
「ちょ、一言で切り捨てる事はないでしょ――が!
 いいじゃない、こういうノリで始めてもさ――」

ゼイネスト
「…ま、お前というキャラの特徴上、こういうノリが一番合っているってのは否定しないがな」

ノーテュエル
「まあ、それは今まで何度も言われている事なんだけどね――。
 で、話を元に戻すわよ。
 『賢人会議』がらみの話の後に、もしかしたらヒナに襲い来るかもしれない危険を敢えて告げたのは、選択肢として正しかったのかな?
 だって、出来ればもう彼女には戦わせたくなんて無いってのが論の本当の想いだと思うし…」

ゼイネスト
「…そうは言ってもな、現実はそうそう思い通りにいってくれないと思うが故だろうな。
 もしヒナが『天使』だってばれたらとんでもない事になる。
 ―――どいつもこいつも目の色変えて、彼女を求めるはずだ」

ノーテュエル
「…本当に『一時の平和』ってやつよね。これ。
 戦争と平和は永遠に繰り返されるエンドレスワルツ…ってとこかな。
 まあ、そんな事態に陥ってくれない事が一番いいってことは、もう言うまでもないわよね」 

ゼイネスト
「それが出来ないからこの世界があるんだ。
 原因があれば結果がある。
 厳しいことだが、受け入れるしかないだろう」

ノーテュエル
「まさに人の業が背負った宿命と言うやつかしら。
 後は…途中から出てきた銀髪の青年とやらが気になるわね。一体何者なのかしら。
 元は軍の人間だってあったけど…『騎士』とか言ってたわね。
 まあ、物語に深く関わる新キャラだってのは間違いなく予測つくけど」

ゼイネスト
「うむ。
 しかし、この物語は突拍子も無くいきなり新キャラが出てくるから困る」

ノーテュエル
「そうやってわざとさりげなくして、伏線を張ってるのよ作者は…伏線になっていないかもしれないけど」

ゼイネスト
「違いないな」

ノーテュエル
「…でさ、話変わるけど…。
 何か『FJ』に移行してから、一話一話が妙に短くなったように感じるのよね。
 前は80KBとか普通にいっていたのに、なんでだろ」

ゼイネスト
「…んー、多分だが、一話一話に端的に意味を込めたかったんじゃないか。
 だらだら長いってのも結構問題だし。
 他の同盟作品を見てみると分かるが、短くても一話一話が完結出来ている作品は多いぞ」

ノーテュエル
「読者に読みやすく…が、作家として最も注意しなくてはいけない点よね。
 後は『オリキャラが本家を踏み台にしない事』かしら?」

ゼイネスト
「そうだ。
 …しかし、この物語には反『賢人会議』派なキャラが多くないか?
 それは、サクラ派を敵に回すことになっているのではないのかと思うのだが」

ノーテュエル
「だって、DTRの舞台は『2198年の9月〜10月』なのよ。
 つまり、の時点じゃ殆どの人物が『賢人会議』の真意を知らないわけ。
 加えて、実際に『賢人会議』と対峙したキャラがいないのも理由の一つね。
 

 …だけど『FJ』は10〜11月の物語だから…」

ゼイネスト
「まさか、近いうちに来るのか?―――――――――『宣戦布告』が」

ノーテュエル
「…さぁ、どうかしら。
 …とまあ、言いたい事は言ったわね。
 さぁて、今更なんだけど今日の運勢をルーレットで図りましょ―――!!
 誰が来るかな?誰が来るかな?ポチッとな!!」

ゼイネスト
「また『いきなり召還ボタン』か――――――っ!!
 気を抜くとすぐにそれをやるなお前はっ!!」







…で







デスヴィン
「…呼んだか」

ノーテュエル
「新キャラが来た――――――!!」

ゼイネスト
「…新たな犠牲者の誕生…これは喜ぶべきか、悲しむべきか」

ノーテュエル
「そんなのどうだっていいのよ!!
 で、強制的にここに呼ばれたわけだけど、何か言う事は?」

デスヴィン
「…無いな。
 今、俺はイルから受けた調査で忙しい。
 お前達からの用件が無ければさっさと戻るぞ」

ゼイネスト
「『賢人会議』を追う傭兵…デスヴィン。
 その正体は、第三次世界大戦を生き抜いた男―――と記されていたな」

デスヴィン
「そうだ」

ノーテュエル
「んも―――!!どーでもいーけどかたっくるしいわね―――!!
 もうちょっと気楽に生きられないの?」

デスヴィン
「そうは言ってもな…生憎と戦いを生き抜き、戦いに生きた身。
 早々簡単に気など抜けん」

ノーテュエル
「あちゃ―――、こりゃ相当な生真面目キャラが来ちゃったわね」

デスヴィン
「…だが、そういうのもたまにはいいかもしれないな。
 今はまだ忙しい身だからそうもいかないが、たまにはそういうのも悪くは無いかもしれないな」

ゼイネスト
「…意外だな」

デスヴィン
「…何がだ?」

ゼイネスト
「堅物にしか見えない貴方が、そういう事を言うとは…と思ってな」

デスヴィン
「生きてきていれば、そういう息抜きが必要な時があるってわかっているだけだ。
 とりあえず言わせてもらうが、俺はどこにでもいそうな『ぎすぎすした尖った神経の持ち主』なんかじゃない―――自分で言うのもなんだがな。
 例えるならば、黒沢祐一とて、寡黙で近寄りがたい雰囲気を持っていたが、それでも子供には『優しいおじさん』だって思われたんだ。
 それと同じようなものだと思ってくれればいい」

ノーテュエル
「…まあ、ちょっと触れただけで『触るな!』とか叫ぶ神経質野郎とは次元が違うと私も思うな。
 それに、三話目のアルテナや恭子に対する口調や、四話目のブリード達とのやりとりで、貴方っていう人がどういう人なのかってのは、きっと皆分かっていると思うわよ」

デスヴィン
「…そうか」

ノーテュエル
「お、ちょっと照れてる」

デスヴィン
「さぁてな。
 さて、俺はそろそろ戻るとしよう」

ノーテュエル
「もう帰るの?早いわね。
 やることがあるってんなら仕方ないけど。
 まあ『賢人会議』の調査を頑張れ…としかいえないけど頑張ってね―――」

ゼイネスト
「では、余裕が出来た時にまた」

デスヴィン
「そうだな…では、失礼する」









ノーテュエル
「帰っちゃったね―――」

ゼイネスト
「こちらもそろそろお開きにするか」

ノーテュエル
「んじゃ、最後に…。
 次回は『一人の『新たな騎士』』でお送りいたします!!
 それではっ!!」

ゼイネスト
「失礼する」


















<こっちもTo Be Contied〜>




















(あってもなくてもどうでもいいような)作者のあとがき>







HTML化する際に、結構な時間を取られます。
ですが、折角の作品である以上、妥協を許せる理由などありません。



…どーしよう、他に言える事が無い。




…あとがきは苦手って訳ではないんですが、キャラトークでみんなが語っちゃうので、私自身が言う事は殆ど無いのですよね。
むむ、しばらくナリを潜めてみましょうかね。






ではでは、それではこの辺で。







○本作執筆中のお供
キシリトールガム・アップルミント味。







<作者様サイト>



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