FINAL JUGEMENT
〜平穏の中で〜













出会いは色々、人間も色々。

小さな出会い。だけど、それでいて確かな出会い。


だが、たった一つの出会いが、後々へと影響する事もある…。
























元シティ・神戸付近にいくつか点在しているプラント。
その中の一つのプラントはいつもどおりに賑わっており、老人・大人・子供など、様々な人々が買い物をしたり世間話をして楽しんでいる。
そんな商店街の町並みを、白髪の少年と銀髪の少女が並んで歩いていた。
傍目から見れば、いわゆるカップルというやつで間違いないだろう。
二人とも満面の笑顔で、強化カーボンの道路を一歩一歩と踏みしめる。




プラントの中は暖かく、今日も偽りの青い空が映し出されている。
何故偽りなのかは説明する必要など無いだろう。
この世界の『本当』の空は灰色の雲に覆われており、一筋の光すら差さない。
世界は極寒の地と化し、滅亡へと着実に向かい続けている。
だけど、そんな中でも、人々は希望を失わないで生きている。
白髪の少年と銀髪の少女のカップルも、その中の一つだろう。
二人は今、ちょうど店先から出てきたところだ。
白髪の少年が持つ茶色の紙袋の内側にはプチプチシートが入っていて、衝撃で中の商品が壊れるのを防ぐ仕様になっている。最も、完全に防げるわけでは決して無い。所詮は気休め程度だ。
袋の中のかちゃかちゃという音は、家庭用品である食器同士が軽くぶつかりあう独特の音だ。
二人が出てきたのは『99均一』と書かれた店。
名前の通りの99円ショップであり、格安で物が買えるのはいいのだが、性能の方もそれなりの物が殆どで、買い替えを前提とした買い物をしなくてはならないのが少々きついところだ。
さらに『99均一』という店の名前にもかかわらず、店内の全商品が『消費税込み』で104円なのはいかがなものか。
左手で104円の文字が羅列したレシートを見やってから、白髪の少年は口を開いた。
「この前の地震で割れちまった皿の代えはこれでよし…んじゃミリル、次行くか」
そう言って、白髪の少年は傍らの銀髪の少女の名前を呼ぶ。
「ねーねーブリード―――あと買うものって何でしたっけ?」
ミリルと呼ばれた銀髪の少女が、白髪の少年の方を向いて口を開く。
「ん、確か…塩とみりんだな」
懐からメモを取り出し、ブリードと呼ばれた白髪の少年は答えた。
「じゃあ、次に行くのは雑貨屋ね」
「お、分かってんじゃん」
「ちょっと、それひどい!私だってそれくらい分かるよ〜」
「はは、冗談だよ」
「むぅ〜!」
ミリルがぷう、と頬を膨らませる。
だが、それはどう見てもへそを曲げた女の子のものだ。
「ごめんごめん」と、ブリードはやや真剣な口調で謝る。
ミリルが本気で怒っている訳ではないという事を、ちゃんと理解している。
だけど、ある程度は真摯を込めて謝らないと、ミリルが機嫌を直してくれないことを分かっているからこそ、ふざけた謝罪はしないのであった。








今来ているのは、ブリード達の住んでいるプラントから数キロ離れたところにある別のプラント。
用件は明確で―――買い出しだった。
ブリード達の住んでいるプラントに売ってない物がないかと思ってきてみれば、意外や意外、予想以上の収穫があったところである。








「じゃあ、次に行きますよ〜ふんふんふ〜ん♪」
ブリードの真横で、鼻歌を歌いながらミリルが笑顔で歩く。
どうやら、もう機嫌は直ったらしい。
ちなみに、所要時間は三分だ。
…最も、ミリルとて、ブリードの先の発言が冗談混じりだという事は、ちゃんと分かっていたからだ。
で、ちょっと拗ねてみただけなのだった。











軽い足取りで歩く、銀髪の少女。
そんなミリルを見て、ふと、ブリードは思う。
―――あの『もう一つの賢人会議Another Seer's Guild)』を巡る戦い以来、ミリルは変わった、と。










「今日は、包丁を使わなくてもりんごが切れました」
にこにこの笑顔で、本当に嬉しそうにミリルは告げた。
風使いトルネーダー)』としての力は本当はそんな事に使うんじゃないんじゃないのか?とつっこまずにはいられなかったが、そんな事よりもミリルが前向きな考えを持つようになってくれた事の方が嬉しかったので、敢えてつっこむのをやめた。
…そんな風に前向きなミリルを見て、思う。
三週間ほど前の『もう一つの賢人会議』との戦いで、間違いなくミリルは成長した。と。
シティ・モスクワにいた頃は、それこそ成績を通知されるたびに身をすくませておどおどしていたのに、今では現実と向き合い、襲い来る困難に対して出来る限りの対抗をするような、凛とした表情を見せてくれるようになった。
最初から「どうせ出来ないもん」なんて決めつける事が無くなり「やれるだけやってみます。諦めるのはそれから」をモットーに毎日を生きている。
『最初から出来ないと思っているから何も出来ない』
―――何世紀も前からあるとても当たり前の言葉だが、ミリルにとってそれは当たり前ではなかったのだ。
その結果『意思』の力が重要なファクターとなる『魔法』の力が脆弱になってしまい、結果、本来の威力を大幅に下回ってしまっていた。
だけど、今は違う。
今のミリルには自信がある。
何でも出来そうな自信がある。
そう。ミリルに足りないのはたった一つ――――『自信』だけだった。
戦闘中という異常状態の中でやっとそれが分かったのは少々複雑な気持ちだが、結果よければ全てよしという事で済ませておこう。





シティ・モスクワに住んでいた頃の出来事は、ミリルにとっては思い出したくない事ばかりだろう。
マザーコア被検体候補にされ、怯えと不安に苛まれ、プレッシャーばかりが上乗せされていき、結果、簡単な事すら失敗するようにまでなってしまっていた。
無論、ブリードはその度に必死で弁解した。
ある時は報告書に「周りがプレッシャーをかけすぎるから」と書いて、お偉方のほうに提出した。
しかし返ってきた結果は「甘えるな」「あれが実力ではないのかね」という冷血な回答しか返ってこず、終いには「本番に弱いだけなら、あがりを防ぐ本でも紹介するよ」という、とことん的外れな回答まで返ってきた。
この件で、お偉方などそんなものだと、ブリードは改めて知った。





ブリードは悩んだ。
何とかしたかった。
力があるんだから、何かが出来るはずだった。
だけど、努力しても中々いい結果は出ず、その間にも時は段々と過ぎていった。
心の中に渦巻いていたのは、『氷使いクールダスター)』としての力が、本当に大切な時に限って何の役にも立たないという焦燥。
でも、ブリードは諦めなかった。
片思いでもいいからミリルのために何かしたいという想いが、ブリードを突き動かしていたのだ。




その内に、転機が訪れる。
シティ・神戸崩壊に関わった二人―天樹錬とフィアが、どこぞから依頼を受けてイギリス付近のプラントを調べに行くという情報が入った。
黒いフードを被った依頼人の意図は分からなかったが、ブリードもその依頼を受けた。
今思うと、黒いフードの下から水色の髪の毛が除いていた気がする。




そして情報通りにブリードは二人と出会い、戦いの末錬を騙しぬいて、フィア奪還に成功する。
そうすれば、シティ・モスクワのマザーコアの代わりが出来るわけだから、ミリルがマザーコアにされるまでの期間が稼げる。




――――最も、その後にノーテュエルやゼイネストといった増援を引き連れて来るなんて、その時は思いもしなかったが。




…だが、ノーテュエルには感謝している。
何を隠そう、ブリードが告白への最後の一歩を踏み出す事が出来たのは、彼女のおかげなのだから。
フィアを取り返しに来た錬との戦闘中に突如として現れた金髪のお下げの少女は、ミリルを人質にとってこう言った。
『この娘は、お前を好いている』―――と。




そこからは、もう勢い任せだった。
返す言葉なんて、とうに決まっている。
何はともあれ、ブリードの、そしてミリルの片思い―――否、この場合は両思いというべきだろう―――は成就されたのだった。







―――そして今、紆余曲折あって『もう一つの賢人会議』との戦いを終えて、二人はここにいる。






ここしばらくは、二人は戦いから離れていた。
だが、最後に一つだけ気がかりな事がある。
それは、あの戦いの中で行方不明になった一人の少女の事。






―――シャロン・ベルセリウス。






世界を憎み、『堕天使ルシファー)』としての力で世界を滅ぼそうと決めた少女。
だが、戦いの中でそれは間違いだと気づき、やっと更生したところで悲劇に襲われ、そのまま行方知れずになった。
しかし、最大の問題はそこなどではない。
シャロンの姿が完全に『いなくなっていた』事が問題であり疑問なのだ。
一滴の血も、一本の髪の毛も見当たらなかったらしい。
故に、彼女がどこにいるのかなんて分からない。



後の事は、『もう一つの賢人会議』の一員だったらしいクラウとイントルーダーに引き受けてもらった。
…というより、あの二人が、
『死んだはずの二人があまり表舞台に出ていては不自然だから、おとなしくプラントで生きていたほうがいいんじゃないの?』
『後のことは任せろ。朗報が入れば連絡する』
…と言っていたので、その通りにしただけだ。
事実、シティ・モスクワのデータには『死亡』の文字をきっちりと残していたのだから、公には二人は死んでいることになっているのだ。





そこで、ブリードの回想が終わる。
「ん?」
その時になって初めて、隣に居たミリルの視線が、街中の方を見ているのに気がついた。
どこを見ているのか?と思って、ミリルと同じ方向に視線を向けると、
「―――かっこいいなぁ」
きらきらと輝く緑色の瞳が、広場に向けられていたのを確認した。
ミリルの視線の先には、一人の男の姿。
…めらめら。
刹那の間を置いて、ブリードの心の中に湧き上がる嫉妬の炎。
同時に、ミリルが意外と面食いだったという事実に気がつき、なんとなくやるせない気持ちになる。
…そんなわけで、ちょいと意地悪してやることにした。
「ほー…」
じと〜、というブリードの視線に気がついて、赤面したミリルは両手をばたばたと振りながら大慌てでフォローする。
「…あ、で、でも私はブリードが一番ですよ!!」
「…それが本心だって事を祈るよ」
敢えてそっけなく答えるブリード。
「当たり前ですっ!!は、初めてのキスだってブ…
最後まで言う前に、口を塞がれた。
「どわ―――ったった!こ、こんな街中でんな恥ずかしい事言うなよ!!」
…だが、時既に遅し。
周りにいた何人かはそれだけで何が起こったのかを目ざとく理解し、ブリード達に向かってなにやら意味ありげな視線と、にやにやした笑みを送っている。










―――数秒後、その意味を理解して、ブリードは天を仰いだ。









「…」
「…」
二人は、気まずい空気を纏ったまま、無言のままとりあえずその場を離れて、街中に入る。
先ほど見かけた男が座っているのは、街の中央部のベンチ。
故に、街中に入っても十二分に分かりやすい場所と言えるだろう。
で、通行人を装って再び男の姿を、男の顔を見てみた。
「…しかし、男の俺から見ても、ほんとにいい顔立ちしてんな…」
「でしょ、でしょ」
その結果、ブリードは嘆息と共に言葉を紡いだ。
で、ちょっとだけ嬉しそうにブリードの発現に同意するミリル。
男の外見年齢はおおよそ二十歳前半と言ったところ。
一見すると、物静かで感情を表に出さないタイプに見える。
顔立ちは非常に良く整っており、時代さえ違えばモデルになれる素質は十二分に持っている。
服装こそ藍色を基調とした戦闘服に、足元付近まで伸びている青紫を基調としたマント。
まるでどこかの傭兵のような格好ではある。
―――だが、その服装には何一つ違和感が存在しない。
ここまで離れていてもなお、目の前の男が相当な実力者だという空気が肌に伝わってくる。
それは威圧感となんら変わらない。
熟練した戦士同士が出会えば、否応無しに感じる空気。
気づかぬうちに、頬を伝う一筋の冷や汗。
それは恐怖か、それとも戦慄か。
―――こっそりとI−ブレインで男の戦闘能力のおおよその大きさを図ろうとしたが、下手をすれば感づかれてしまい、それが元で戦いになるかもしれない…という懸念から、今のところは実行には移さなかった。
そもそも、ブリードとて様々な戦闘を繰り広げてきた戦士だ。先ほどの威圧感を伴った空気で、脳内で既に結論は出ている。
――――戦いになった場合、勝てるわけが無い。
「……」
ブリードは無言のまま、近くにあった窓に映った自分の顔を見て、
「………」
なんともいえない複雑な気持ちに襲われた。
ああ悲しきかな、憎むべきは持って生まれたこの体、そしてこの顔。
ブリードとて自分の顔にちょっとは自信があるはずだったが、目の前の男を見た途端、その自信はどこかへと吹っ飛んでしまった。
(…次元が違うっつーの)
それが、真っ先に出た感想だった。
複雑な心境のまま、隣を見ると、
「…あれ?」
今まで隣に居た筈の、銀髪の少女の姿が忽然と掻き消えていた。
一瞬、何故か嫌な考えが浮かび、慌てて周囲を見渡して少女の姿を探すと、
「すみませーん」
聞きなれた少女の声がすぐそばから聞こえて、反射的に声がしたほうを見ると、
「…焼き鳥十本くださーい」
(…なんだそりゃぁ!焼き鳥買いに行くなら行くって一言くらい言ってくれよ!!心配して損したじゃねぇか!!)
…五メートルも離れていない焼き鳥屋のカウンターの前にいる事を確認して、ブリードは肩を落として安堵する。
ついでに、その場に居ない少女に空ツッコミを入れることも忘れない。
(…最近、一人ツッコミの機会が増えたよなぁ…)
その後、心の中で嫌悪して、ため息をつくのも恒例行事。
元々ブリードは、一度、物事に集中すると、周りが見えなくなるタイプだ。
特に、掃除なんかを 始めると一心不乱になってしまって、誰かが声をかけても止めないために『掃除大臣』という称号が一部でつけられたくらいである。
…ブリードからしてみれば、それは称号というより馬鹿にされている気がしてたまらないのだが。




…補足しておくが、ミリルはブリードに「焼き鳥買ってきますね」と確かに告げた。
だが、その時ブリードは己の顔と肉体に対して落胆しており、ミリルの声など耳に入らなかった。
ただ、それだけだったのだ。



そして、ブリードの方へと歩いて戻っているその時に――、


「あっ……」



強化カーボンのでっぱりにけつまづいて、ミリルの体が大きく前に倒れた。



「きゃ―――っ!!」
刹那、小さな叫びがあたりに響く。
それだけで事態を理解したブリードは、脳に命令を送る。
同時に、現実の肉体も行動を開始。
「ミリルッ!!!」
反射的に少女の名前を呼んで、次の瞬間にはI−ブレインの起動が完了。
常人には出せない速度で、文字通りにブリードは飛翔する。魔法士だからこそ出来る芸当だ。
身体速度は通常の八倍、知覚速度は三十二倍。その対比は四対一。
刹那の間をおいて、ブリードの体は倒れ掛かったミリルの軽い肢体を抱きしめていた。



人々の目は、二人に釘付けだった。
あまり驚いた様子がないのは、おそらく、何らかの理由でここの人達が魔法士に慣れているからだろう。



「…大丈夫か?」
壊れ物を扱うように、ブリードは優しく丁寧な言葉を選んだ。
「う…うん」
ブリードの腕の中、ミリルは小声でそう答える。


で、次の瞬間、予測どおりの展開が待ち受けていた。
「よっ、やるねぇ兄ち―――ゃん!!」
「初々しいわ〜〜食べちゃいたい」
「う、羨ましくなんてないぞ!!」
「お赤飯、格安にしておくから買っていきなさ〜い!!」



周囲から所狭しと飛び交うエールと冷やかし。
こういうときに限って人がいっぱい居たりするのだから、世の中困ったものである。
もちろん、当事者である二人とも、顔を真っ赤にしてしまっていた。



いまだ覚めやらぬエールと冷やかしの中、ミリルの軽い身体をゆっくりと地面に下ろして、ブリードは一息つく。
「ありがと…ブリード。
 だけど焼き鳥…」
「そんなもん気にすんな。また後で俺が買ってやるよ」
「…うん」
恋人同士が交わす会話と共に、向き合う二人。
周囲のエールを敢えて無視して、ブリードはミリルを立ち上がらせる。
その手の動きは、相手を傷つけないようにするための慎重且つ繊細なもの。
そして、ミリルが立ち上がりきったところに、









「―――いい雰囲気な所、悪いのだが。
 …焼き鳥の件なら心配ない。これは、君達のだろう」










突如、今まで一言も喋らずに沈黙を守っていた男の声。
見れば、男はベンチから立ち上がっており、その手にはパックに包まれた焼き鳥が汁一滴こぼれることなく、買ったばかりの形状を維持していた。
「冷めない内に食べるといい。ここの焼き鳥の味はかなりのものだからな」
穏やかな口調とともに、焼き鳥のパックが差し出される。
歴戦の戦士を思わせる雰囲気から出た言葉は、それを完全に打ち消すような、とても日常的なものだった。
「あ、ああ、サンキュ」
そのギャップの激しさに、焼き鳥を受け取ったブリードの口調が、思わずしどろもどろになってしまう。
だが、同時にこの男に対する緊張感も薄れた。
「いい彼氏を持ったな」
ブリードに目だけで相槌を打つと、男はミリルの方を向いてそう言った。
その言葉に対し、数瞬ほど、ミリルの頭の中が真っ白に染まった。どうやら、公衆の前面でそんなことを言われたために、思考能力が数瞬だけだが麻痺したようだ。
で、そのうちに頭が思考能力を取り戻し、
「…あなたは、いい人なんですね。だって、見ず知らずの私達の為に、ここまでしてくれたんですから」
最初に出た言葉がそれだった。
言ってしまってから後悔。ミリルは、あ、という感じでうろたえる。
「いやなに、ちょうどこっちに飛んできたのでな。受け取らないに越したことはなかっただろう」
「俺からも改めて言わせてもらうよ…ありがとよ。
 …それにしても、あんた、この辺じゃ見ない顔だけどよ、最近来たばっかなのか?」
ブリードは軽く頭を下げて感謝する。
そして、ブリードからの質問に対し、男は顎に手を当て、一瞬考えるように目を瞑った後に、
「―――ああ、この近くにあるアパートに住んでいる」
はっきりとした声で、そう答えた。
「へぇ、じゃあ、近所ってことになるんだな。
 …といっても、俺達の住んでるプラントは、こっから少し離れているけどな」
「…なら、また会う可能性があるな」
「それ、いいかもしれませんね…あ、じゃあ、こうして出会ったのも何かの縁かもしれませんし、お名前を聞かせてくれませんか?」
ミリルの問いに対し、男は一瞬瞳を閉じてから、ゆっくりと告げた。
「―――デスヴィン・セルクシェンド、だ」















――― * * * * * * ―――














買い物が終わった帰り道で、ブリードとミリルはそろって歩いていた。
ちなみに、焼き鳥はビニール袋に入れてある。
夕飯の後に食べる予定だ。




今、二人っきりで色々な事を話し合っていた。
それは雑談から始まり、今日の出来事の回想へと繋がっていく。
「それにしても、あのデスヴィンって奴も、話してみると、割と話の分かる奴だったな…まあ、今のところの感想なんだけどよ」
「焼き鳥、受け取ってくれたしね」
「そういやミリル、ここんとこ、言葉に自信が備わってきたな。前は結構おどおどしてたのに」
「ブリードがあの時『お前なら出来る』と言ってくれたからです」
「あ…そうだった…か。
 まあ、今のミリルの方が、前よりいいってのは確かだと俺は思うけどな」
「ふふ、ありがとう」
「…そうだな。
 で、ちょいと話が変わるんだが」
「何?」
刹那、ブリードを包む空気が険しいものへと変わった事に、ミリルはうっすらと感づいた。
気づかないうちに真面目な顔になって、ブリードからの言葉を待つ。
その一秒後、言葉が放たれた。
「―――分かった事が一つある。
 あいつは…デスヴィンは敵に回しちゃまずいってことだな」
「え?」
ブリードの口調が、その時だけ厳しくなった。
その様子に、少なからずミリルは動揺する。
「だってよ。普通なら自分がここに住んでいるとか明かさないだろ。
 だけど、そうであるにもかかわらず、デスヴィンは自分がこの近くに住んでいるって事を俺達に教えた。
 これがどういうことか分かるか?」
うーん、とミリルは一瞬だけ考えて、
「…それって、余程の実力者のやることってことですよね」
期待半分、不安半分の顔で答えた。
勉学面での己の成績が悪いことを知っているミリルは、こういう件に対して全般的に自信がないのだ。
だが、その心配は杞憂だとすぐに知る。
「正解だ。
 あれは建前とか意地っ張りとかの次元を超えている。
 一流以上の戦士が持つ、確固たる自信と尊厳。そして、それに相応しい実力。
 つまり、魔法士だとばれてもなんら問題は無いって事を言っているようなもんだ。
 一つ付け加えるなら、もし来るなら来い、返り討ちにしてやるって感じだな、ありゃ」
ブリードの言葉には、ミリルの回答を否定するような部分は無かったからだ。
その間にもブリードは続ける。
「で、デスヴィンが焼き鳥を届けてくれた時に、俺は、物は試しとI−ブレインを通してデスヴィンを見てみた」
「え!?」
ブリードの言葉に対し、即座にミリルが反応する。
先ほどは試みなかったはずの『I−ブレインを通して相手を見る』という行動を、ミリルが知らないうちにブリードが実行していたと聞いては、黙っていられなかった。
だが、ブリードの口調は変わらない。
ミリルのリアクションを見ても尚、さらに話を進める。
「いいから黙って聞いてくれ。
 …んで、見えたのは巨大な意識容量の塊さ。しかもその力の殆どは外向きに、十分に使える準備が整っている。
 戦闘経験とか技術とか、それ以前の問題だ。意志力だけでねじ伏せられそうだった。
 で、そっから俺は一つの結論に達した」
ここで一呼吸置いて、ため息と共にブリードは続けた。







「――正直、デスヴィンと戦って俺が勝てる確率は…一割にも満たない」






「!!」
反射的に、ミリルは両手で口を押さえた。
ブリードが口にしたその言葉の意味が、否応無しにわかってしまったからだ。
ブリードとて、元はシティ・モスクワの最強クラスの魔法士だ。その称号は偽りでもなんでもない。
故に、ブリードが並大抵の相手に負けるわけが無い。例えそれが、魔法士だったとしてもだ。
そんなブリードが発した今の発言は、上には上がいるという事を如実に伝えていた。
「…で、でも、それだったら、ブリードがデスヴィン…さんの事をI−ブレインで見た時に、どうしてその場で勝負を挑んで来なかったのでしょうね?
 だって、世の中には、魔法士が嫌いな人も居るはずだと思うし、下手をしたら、その場で斬られてもおかしくなかったのよ」
ミリルの意見を聞いて、ブリードは、ふむ、と顎に手を当てて考えるような仕草をとって、
「…と、待て。なんでまた『さん』付けをするんだ?しかも、今日出会ったばっかりの相手に」
考える前に疑問を口に出した。
「いえ、見た感じ、私たちと比べれば年上ですし…。
 それに、この付近に住んでいるなら、きっとまた会えると思うから」
が、それが来るのが分かっていたかのように、ミリルは即答する。
「なるほど」
ブリードはもっともな理由に頷く。
「…で、ミリルの疑問についてなんだが…。
 まあ、正直、俺も最初は、I−ブレインからデスヴィンを見ようだなんて思わなかったんだ。
 だけどな、実際にデスヴィンを見て、きっと大丈夫かもなって思ったから、I−ブレインからデスヴィンを見てみようって思ったんだ」
「…その理由は?」
「あの時、デスヴィンの目を見て思ったんだけどさ…あの目、レシュレイとかと同じでよ…優しい目だったぜ。
 性根の腐った人間とかには絶対に真似できない、悪意も偽りもないまっすぐな瞳だ」
レシュレイという名前を聞いて、ミリルの頭の中に、先の戦いで出会った、蒼髪の一人の少年の姿が思い出される。
桃色の髪の少女との仲がとってもお似合いで、まさに相思相愛といった感じだった。
そして、『もう一つの賢人会議』との戦いで、大切な兄を失ってしまって…。
「………」
そこまで考えて、思い出すのを辞めた。
この問題はレシュレイ達の問題。
手助けはしてあげたいと思ったが、今、ここでどうのこうの考えても意味など無い。
考えを切り替えて、今度はデスヴィンの瞳の色を思い出す。I−ブレインの過去ログをあさったところ、一秒足らずで出てきた。
「そういえば、確かに綺麗な青色の瞳でしたね」
思い出してから、まるで宝石みたい、と思った。
「上辺や嘘八百でいくら誤魔化そうとも、絶対に誤魔化せないものがある―――それは目だ。
 目は口ほどにものを言うって昔から言うくらいに、心の腐った人間の目は、いくら見た目を誤魔化そうとしても、その瞳に宿るどす黒い漆黒のような色は隠せないのさ。
 そして、デスヴィンにはそれが無かった。
 …それに、周りにはたくさんの人間が居たしな。そうなれば、余程良識の無いやつでもない限り、いきなり襲ってくることは無いさ。
 だから俺は思った。多分、これくらいの事なら大丈夫だって」
うーん、とミリルは考え込んだ後に、
「…そうだね。私もそう思う。
 …だけど、だからって、むやみに他人の事をI−ブレインを通して見ちゃダメだよ。今回はたまたま大丈夫だったから良かったけど、もしデスヴィンさんが『魔法士が嫌いな魔法士』だったらどうするの?」
人差し指を立てて『めっ』といった感じのポーズでブリードを諭した。
「あ、そんときゃ逃げるわ」
あっさりと、拍子抜けする口調でブリードは言い切った。
「〜〜〜〜〜っ」
能天気なブリードの発現にやり場の無い憤りを覚えたミリルは、拳を振るわせる。
ちなみにこの感覚は、かつて、ノーテュエルに『参ったって言わせてあげます!』と言った時に『参った』と切り替えされた時と同じ感覚だったが、その時はそこまで思い出すことは無かった。
「それによ」
先ほどとは異なり、ブリードの口調は落ち着き払っていた。
「言っとくがよ、魔法士がI−ブレインで魔法士を見たとしても、結構気づかれないもんなんだぜ。
 それこそ『天使』みたいに『圧倒的な状況認識力』が必要になるんだからよ」
「じゃあ、もしデスヴィンさんが『天使』だったらどうするんですか」
「…いや、流石にあの外見で『天使』は無いだろ…」
瞬間、白い翼を生やしたデスヴィンの姿を勝手に想像したミリルは、
「…う、ちょっとあってほしくない」
言葉通りの『ちょっと嫌な顔』をした。
「だろ」
「ですね」
「…っと、くっちゃべってたら余計な時間を食っちまったな」
脳内時計は『午後五時二分』を告げた。帰路に着き始めたのが四時半過ぎあたりだから、三十分も話していた事になる。最も、最初の雑談の長さもあっての事なのだが。
「空はいつも灰色なのに、生活習慣だけはしっかりしてるよね、私達。
 …なんか、へんなの」
「おいおい、いつ如何なる世の中でも、規則正しい生活習慣は基本だろ」
「…ふふ、その通りだね」





それからも、色々と雑談しながらも、二人は帰路についた。











――― * * * * * * * ―――











午後五時を過ぎれば、人の気配もまばらになる。
太陽のないこの世界では、気温など基本的には変化がない。
だが、プラントの中にも朝昼夜はあるようで、夜になれば暗くなるのもまた当たり前―――というよりは、電気代が勿体無いから朝昼夜というサイクルを作ったのではないかと、ふと、疑問に思った。
「ま、それはどうでもいいとして、だ」
ぼうっとして景色を見つめていたら、いつの間にかこんな時間になってしまった事に気がついた。
ふう、というため息と共に、小さなベンチからデスヴィンはゆっくりと立ち上がる。
それはまるで、慣れない仕事で疲れたような社会人の動作だ。
だが、それも仕方がなかっただろう。










ブリードとミリルという二人の少年と少女が去ってから、いきなり周囲の人々がどどっとデスヴィンに押しかけてきて、質問とコメント攻めにあった。
「見てたぜ!若いのにやるじゃねぇか!!」
「だたの色男かと思ったら、中々どうして」
「凄いな!どうやったんだ!!」
「やーん、名前教えて―――!!」
「おにいちゃん、かっこよかったよ―――」
「おれにもやりかた教えてよ!」
「小学校の体育の教師をやらないか?臨時でいいから」
「食べ物は粗末にしちゃ駄目だよねぇ」
「焼き鳥焼き鳥焼き鳥―――」
その中には子供も幾人か混じっていたので無碍に断るわけにもいかず、結果、全ての人たちに対して何らかの形で返答した。
あれだけの人数を相手に一人一人返答していくというのは、今まで体験した事などなかったから、途中で返答に詰まった事も多々あった。
だが、だからと言ってデスヴィンが口ごもると、その相手が申し訳無さそうな顔をするので、答えらざるを得なかったのだ。





―――ちなみに、教師の件は丁重に断らせていただいた。もしかしたら、いつかはここを出るかもしれないこの身だ。
小学生相手だと、顔を覚えられる可能性もある。故に、下手に教師など請け負っては、いつかこの町を出るときに出づらくなってしまうだろう。
「――まあ、本当はもう少しゆっくりしたかっただけなんだがな」
感傷に浸った後に、誰にともなく呟く。
(…しかし、あの程度なら、少し実力のある魔法士であれば普通にできると思うのだが…何も、あそこまで褒めちぎるに値するような事なのか?)
そのすぐ後に、ふと疑問に思った事柄。
そこんじょいらの魔法士でも出来そうなあれだけの行為に対する、過剰なまでの褒めちぎり方。
目を瞑り、しばらく考えてみるが、
(―――分からん)
結局、答えは出なかった。
だけど、その原因は分かっている。
今までの人付き合いに乏しかったデスヴィンには、他者の感情というものは中々理解できなかったのだ。
それをこれから覚えていかなくてはならないなと、心の中で強く思った。








―――今、デスヴィンは戦いからかけ離れた場所に居る。
血を見ることとは比較的縁遠い『現在いま)』に。
これからどうなるかなんて分からない。
「…そういえば」
ふと、今日出会った二人の事を思い出す。
白髪の少年と、銀髪の少女。最近にしては珍しいほどに初々しいカップリングだ。
加えて、公衆の前面であれだけの事をやらかしたのだから大胆だなと思ったが、どうやら、あれはやりたくてやったわけではないらしい。
―――もしやりたくてやっていたとしたら、相当のバカップルだが。




ブリードと名乗った少年から、そして、ミリルと名乗った少女から、I−ブレインの反応を感知した。
だが、デスヴィンの実力なら、ブリードらに対して負けることはまず無いだろう。
ブリードらの持つ能力は分からないが、デスヴィンに比べると意識容量の差が歴然だ。
というか、ブリードがデスヴィンの事をI−ブレインを通してみていたのには、実は気づいていた。
おそらく、好奇心からデスヴィンの戦闘能力がどれくらいなのかを図ろうとしたのだろう。
そんな類の魔法士は、これまでに幾度となく出会っているから、もう慣れた。いちいち突っ込む気にもなれない。
―――だが、それならブリードは分かった筈だ。デスヴィンの持つ戦闘能力を。
これはある意味での牽制。
そして、もじブリードが己の実力を知るタイプなら、絶対にデスヴィンに喧嘩を、あるいは戦いをふっかけて来ない筈だ。
守るべき少女が近くにいるのだ。その点を考慮するならば尚の事であろう。
また、仮に正体がばれてしまい、何らかの形であの二人と戦うことになったとしても、デスヴィンに負けるつもりは欠片もない。
もって生まれたこの力に自信はあるし、戦後も様々な仕事や傭兵家業でその力をさらに鍛えた。
無論、その強さゆえに雇い主に裏切られたこともあったが、その程度の問題は、デスヴィンにとって障害にすらなりえなかった。
その全てを返り討ちにする―――ただ、それだけが全て。
無論、デスヴィンが魔法士という事もあり、ノイズメーカーを使ってきた輩も大勢いた。
だが、そこんじょいらのノイズメーカーなど、デスヴィンが持つ特殊デバイスさえあれば敵ではなかった。
この特殊デバイスは文字通り非常に特殊で、一度確認したノイズメーカーの波長を記憶し、即座にそれを無効化する為のプログラムを作成するのだ。
故に、二回目以降は同じ波長のノイズメーカーは全く持って効果が無い事になる。
これが、デスヴィンの不敗の理由の一つだった。




だが、デスヴィン自身、自らが持つこんな力は使われない事が最良だという事は、この十年で思い知っている。
元よりデスヴィンは無闇な戦いなどしたくないし、何より、ブリードのI−ブレインからは敵意が感じられなかった。
―――最も、もし勝負を挑んできたら容赦なく返り討ちにするだけ。
しかし、それが懸念で済んだため、心の中では安堵していた。









そこまで考えて、ふと、足を止める。
む、と思い、買い物袋の中を確認してみる。
―――買い忘れ、発見。
仕方無しに引き返すことにした。






「…ちょいと、寄ってくか」






そうして、デスヴィンの足は、自然と雑貨屋へと向かっていった。
刹那、脳裏に一人の少女の姿が浮かぶが、デスヴィンは頭を振り払い、歩みを進めた。
(買い忘れがあっただけだ。関係ない)
自身に対し、そう言い聞かせながら。






























<To Be Contied………>















―【 お ま け の キ ャ ラ ト ー ク 】―












ノーテュエル
「はーい!!こんにちは―――!!」
ゼイネスト
「…もうすっかりここの常連だな、俺達」
ノーテュエル
「えー、いいんじゃないー?出番がないよりは」
ゼイネスト
「と言っても、俺達以外の殆どのメンツはDTRの最後の方まで出番があったけどな」
ノーテュエル
「ていうか、私達が死ぬのが早すぎたんじゃないの!?」
ゼイネスト
「仕方あるまい。俺達の能力についてよっく考えてみろ」
ノーテュエル
「私達の能力がどうし―――え…まさか」
ゼイネスト
「…気づいたか?」
ノーテュエル
「あー、『ノイズメイカー殺しラグエル)/RP>』と『自己ノイズメーカーウリエル)/RP>』だもんね…。
 よーく考えたら、ありえないくらいのバランスブレイカーだわ」
ゼイネスト
「俺達がいたら、例えエクイテス戦だろうが何だろうが、あっさりケリがついた可能性も無くはないからな。
 過ぎた力の持ち主何ざ、いないほうがいいのかもな」
ノーテュエル
「なんだか難しい話ね―――。
 ま、それはそうとしてさ」
ゼイネスト
「ん?」
ノーテュエル
「私達っていっつも一緒に登場するよね。だからさ…」
ゼイネスト
「言えている。
 だから…なんだ?ちょっともじもじして…」
ノーテュエル
「んじゃさ、もう考えちゃおうよ、コンビ名」
ゼイネスト
「お前とコンビを組んだ覚えはないのだが。
 ていうか、前回と立場が逆転してるし」
ノーテュエル
「即座に返答するなこの――――――っ!!(ナイフを投擲)」
ゼイネスト
「来たかこのお転婆娘!!
 ―――っと!!何度も喰らっているからな!その程度で俺をしとめられるとおも―――ぐあっ!!(背中に刺さるナイフ)
 な、何故だ…軌道の読みは完璧だったはずなのに…」
ノーテュエル
「ふっふーん、巷で人気のリターンダガー(投げたら戻ってくるダガーの事)を使ってみたのよ」
ゼイネスト
「く…そ…何世紀前の人気だ」
ノーテュエル
「さあ」
ゼイネスト
「―――根拠もないのに言い放ったのかお前っ!!!…と、やっと抜けた」
ノーテュエル
「あ、思ったより早かったね…まあ、そうでなきゃゼイネストじゃないけどね。
 それにしても、背中に刺さったナイフ抜くなんて、ゼイネスト、結構体が柔らかいのね」
ゼイネスト
「喜んでもらえて光栄だ(完膚なきまでに棒読み)。
 で、話題を戻すが…コンビ名は何にする気だ?」
ノーテュエル
「そうね………あ、じゃあ、こんなのどう?









――――――『おねがい☆死人ズ』で!!!!!!!!









ゼイネスト

「――――――語呂と縁起が悪すぎるわっ!!!!








ノーテュエル
「ちなみに作者は『おねがい☆ツインズ』については全く知らないそうよ。知っているのは名前だけみたい」
ゼイネスト
「どうでもいい補足を有難う(棒読み)」
ノーテュエル
「何よ―――、乗り気じゃないわね―――」
ゼイネスト
「いい加減、二人っきりのこの状況に飽きてきたのでな…しかし、そういえば由里はどこへ行ったんだ?」
ノーテュエル
「巻き添えを被りたくないからって今回は出てないわよ。




――――――なんて言い訳が通用するとでも思ったかっ!!!!!
ゼイネスト
「召還ボタン!?いつの間に!?」
ノーテュエル
「ぽちっとね!!!」
ゼイネスト
「やめろ!!罪も何もない少女を巻き込むな!!」
ノーテュエル
「遅いわ――――――っ!!!」







…で。







由里
「きゃあ――――!!
 ま、まさかここは噂の『破天荒娘領域』ですかぁっ!?」
ノーテュエル
「何よそれ!!」
ゼイネスト
「ふむ、歌詞はきっと『もう止まってよ暴走じみたその行動。常識なんて無意味に等しくて…』って感じだろうな」
由里
「多分正解です。で、最後の歌詞は『貴女から無事逃げおおせたら、見つかりたくなんてない』ですねっ!」
ノーテュエル
「―――あんたら人を何だと思ってんのよっ!!!
 ていうかそれ『聖少女領域』のめちゃくちゃな替え歌だし!!」
ゼイネスト
「作者はALI PROJECTも好きらしいからな」
由里
「そんな事より、早く今回のポイントに焦点を当てた会話をしましょうよ」
ゼイネスト
「うむ、忘れるところだったな」
ノーテュエル
「ええい、二人して無視するな―――っ!!
 …可愛らしい命、ずたずたにしてあげ…
ゼイネスト
「…悪い、冗談だ」
由里
「ご、ごめんなさい…」
ノーテュエル
「…分かればよろしい。
んでさ、唐突だけど、今、コンビ名をもう一個思いついたわけよ」
ゼイネスト
「…言ってみろ」
ノーテュエル
「そうね―――『お願い☆死人ズ』じゃなくて………。










――――――『ふたりは死にキュア』で!!!!」








由里
「ご、語呂悪い―――っ!!」
ゼイネスト
「さっきより酷いだろ!!そして、無理矢理にも程があるだろっ!!」


ノーテュエル
「…馬鹿やってないで、いい加減本編についての話もしなくちゃいけないわね。
 あと、作者はプリキュアはさっぱり分からないって言ってたわ」
ゼイネスト
「というか、脱線したのは誰のせいだ」
ノーテュエル
「ごめんなさい」
由里
「…話進めますよ。
 この話では、ブリード達とデスヴィンとの出会いが描かれていたんですね」
ゼイネスト
「という事は、後々、この三人は何らかの形で関わってくると読めるな
 しかし、デスヴィンは相当な戦闘能力の持ち主らしいな。
 加えて、寛大な心の持ち主とも言える。お前も見習えノーテュエル」
ノーテュエル
なにお―――っ!!!
 …それにあれは、寛容というよりは、強者の持つ余裕に見えたけど」
由里
「だけど、戦わないに越した事はないと思いますね。
 あんな街中で戦ったらどうなるかなんて、分かりきった事ですし」
ゼイネスト
「まあ、それはお互いが分かっていたんだと思うけどな」
由里
「いずれにしても、これから先、どうなるのかが楽しみですね。
 私としては、敵対はして欲しくないんですが…」
ノーテュエル
「そうそう、そーゆーこと…あー、終わった」
由里
「…何か、物凄く『ついでにやっといた』感が漂ってますね」
ノーテュエル
「だってしょうがないじゃない。生活描写ばっかりで盛り上がりが無いんだもの」
由里
「え?私は好きですよ。こういう空気。
 だって、戦闘ばっかりじゃ…それはそれで…」
ノーテュエル
「まあ、確かに、WBの本当の見せ場は戦闘よりも『各巻ごとの難しいテーマ』にあるって作者は思っているからね。
 でもさぁ、正直、第四話の時点で戦闘らしい戦闘が一個も無いってのが不満なのよ。
 だって、本家WBでも、全巻通して最初の方で何かしら戦闘が起こっているじゃないのよ」
由里
「内訳すると
・一巻…錬VS祐一。
・二巻…ファンメイVSシャオロン。
・三巻…マリアVSディー。
・四巻…錬&フィアVS空賊達。
・五巻…サクラVSイル。
…ですね」
ノーテュエル
「そういうこと。私の不満はまさにそこにあるの」
由里
「あれ?前の話でデスヴィンが戦ったはずですけど?」
ノーテュエル
「いや、あれ殆ど簡略化されていたでしょ。
 …あ―――っ!!もう、静か過ぎ!!」
ゼイネスト
「…甘いなノーテュエル、人、それをなんて言うか知っているか?」
ノーテュエル
「…面白い問いね…頭文字は『あ』かしら?」
ゼイネスト
「そうだ―――『嵐の前の静けさ』というんだ」
ノーテュエル
「―――――てことは、そろそろ大きな動きがあるのかしら?」
由里
「じゃあ、次回はきっと期待できますね…。
 …ん?あ、あれ?空から何か降ってきましたよ」
ノーテュエル
「キャッチ!!
 …これは真っ白な紙切れね。
 あれ?何か書いてある。
 えーと『由里、そろそろ出番が来るから準備しておいて』だってさ」
ゼイネスト
「…予感的中…だと思えばいいのか?」
由里
「…あ、じゃあ、申し訳ないけど私戻りますね」
ゼイネスト
「ああ、気をつけてな」
ノーテュエル
「じゃぁねぇ〜〜〜!!」
由里
「失礼しました―――」






ゼイネスト
「行っちゃったな」
ノーテュエル
「うん」
ゼイネスト
「…今回はこの辺で終わりにするか」
ノーテュエル
「そうね。ネタも切れたし」
ゼイネスト
「では次回『命の行方』でまた会いましょう」
ノーテュエル
「おやすみ〜〜〜〜」


















<こっちもTo Be Contied〜>




















(あってもなくてもどうでもいいような)作者のあとがき>







はい、キャラトークではっちゃけました。
や、一度でいいからやってみたかったのですよ。このネタ。


さてさて、ブリードらとデスヴィンの出会いは、後にどう発展していくのか?こうご期待!






次はまた、由里の出番となる予定です。
彼女が気にかけていた人物が、次で明らかになります。










ではでは、それではこの辺で。







○本作執筆中のBGM
『サウダージ』『hollow』など。







<作者様サイト>
同盟BBSにブログのアドレスを載せておりますので、お暇があればどうぞ。


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